・夫の親族と関係が悪いので姓を変えたい
・夫の苗字が読みにくく妻の旧姓にしたい
・妻の両親の苗字を引き継ぎたい
様々な理由で、結婚後、夫の苗字から妻の旧姓に変更したいという相談を頂きます。
それでは実際に結婚後、夫の苗字から妻の旧姓に変更することができるのでしょうか?
この記事では、「苗字を変更する3つの方法、手続きのポイント」を記載しております。
また弊所では次のような記事も記載しております。ご参考下さい。
「母の旧姓に苗字を変更する方法」
「夫婦で別姓を名乗る方法」
「離婚後の戸籍謄本の見本」
目次
苗字の変更方法
婚姻中の夫婦が妻の旧姓に苗字を変更するには、次のような方法があります。
①夫婦が離婚届出を提出し、妻の苗字で再婚をする
…確実に苗字を変更できる
…戸籍に離婚の旨が記載される
※「離婚後の戸籍謄本の見本」をご参考下さい。
※元夫と再婚する場合、再婚禁止期間はありません。
②夫が妻の親族と養子縁組をする
…確実に苗字を変更できる
…夫が妻の親族の相続人となる
③家庭裁判所で「氏の変更許可申立」を行う
…筆頭者であれば手続きができる
…変更するには「やむを得ない事由」が必要
確実に苗字を変更できるのは離婚手続きを行う場合や養子縁組をする場合ですが、それぞれ注意すべき点があります。
苗字を改名されたい方が、どの手続きを行えばいいか弊所なりにまとめました。
上記の①②の手続きは確実ではありますが、戸籍や相続人などに影響を及ぼす内容ですので、③の手続きで裁判所から変更許可されなかった後に①②の手続きを行うのも一つの方法かと思います。
なお、戸籍の筆頭者の苗字が変わると同じ戸籍にいる全員の苗字が変更されますので、戸籍の中に苗字を変更されたくない方がいらっしゃる場合、事前にその方は分籍しておく必要があります。
養子縁組による変更
手続きの場所
…市役所
(養親または養子の本籍地または住所地)
届出人
…養親および養子
※養子が15歳未満のときは法定代理人
必要なもの
・届書
・届出人の印鑑
・本人確認書類(運転免許証等)
・戸籍謄本
※届出の役所が養親および養子の本籍がでないとき
・家庭裁判所の許可書謄本
※未成年者を養子にするとき、後見人が被後見人を養子にするとき
ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子とするときは不要
養子縁組をすることで、養親の苗字に改名することができます。
ただし、養子縁組をすることで養子は養親の相続人となります。
つまり、養親が亡くなれば、もちろん養子を含めて協議する必要がありますし、扶養義務が発生する場合がございます。
また養子縁組の要件も抑える必要があります。
普通養子縁組の要件
・養親が成年者であること
・養子が養親の嫡出子、養子ではないこと
・養子が養親の尊属、年長者でないこと
・後見人が被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可を得ていること
・配偶者のいる人が未成年者を養子とする場合は、配偶者とともに縁組をすること
※配偶者の嫡出子を養子とする場合は、単独で可能
・養子、養親に配偶者がいる場合は、配偶者の同意を得ていること
・養子が15歳未満のときは、法定代理人が縁組の承諾をすること
※法定代理人以外に養子の父母で監護をすべき方がいる場合、その同意を得ていること
・養子が未成年者の場合、家庭裁判所の許可を得ていること
※自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合を除く
家庭裁判所での変更
申立できる人は?
「氏の変更許可申立」は、戸籍の筆頭者であれば、どなたでも申立可能です。
結婚している場合、配偶者とともに申立します。
変更許可の条件は?
家庭裁判所から改名を許可してもらうには次の条件を満たす必要があります。
「氏の変更」 戸籍法第107条
やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
つまり苗字を変更するには「やむを得ない事由」が必要となります。
裁判所が変更する基準として次のような点がございます。
1.改名の動機が正当で、必要性が高いか
2.改名による社会的影響は少ないか
これらの基準を満たしている場合、家庭裁判所の許可を得る可能性が高くなります。
具体的な例としては次のようなものがあります。
・妻の親と同居している
・夫が過去に妻の旧姓を名乗っていた(妻の親族と養子縁組をするなど)
・結婚当時、夫婦のどちらかが強引に苗字を決めた
・相手の苗字に変更することが結婚の条件となっていた
・婚姻後、それほど日数が経っていない
・妻がお墓を引き継いで行く必要がある
・妻が親の事業を引き継ぐ
・通称名の実績がある
※通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。
弊所では通称名の実績が無い状態で、変更許可を得た事例は多く存在します。
特に婚姻から半年以内の場合など、結婚してあまり期間が経過していない場合には、弊所で有利に進めれる可能性がありますので、そのような方はお早めに、氏名変更相談センターまでご相談下さい。
必要な書類は?
家庭裁判所へ申し立てをする際に必要となる書類は次の通りです。
申立書
苗字を変更する際、家庭裁判所へ申立書を提出する必要があります。
申立書はこちらからダウウンロードすることができます。
1枚目の記載については、該当する項目にそのまま記入して頂ければ問題ありませんが、2枚目の内容については、その内容によって変更されるかどうかが決まりますので、よく検討されて記入する必要があります。
戸籍謄本
戸籍謄本は、3か月以内に発行されたものを提出します。
また、本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
収入印紙・郵便切手
家庭裁判所で氏の変更に必要な費用は次の通りです。
1.収入印紙800円
2.郵便切手200円~1500円ほど
3.(許可後) 収入印紙150円
郵便切手の金額は管轄の家庭裁判所によって異なります。
「郵便切手金額一覧」をご参考下さい。
変更を必要とすることが分かる資料
婚姻後、夫婦が戸籍上は夫の苗字であるにも関わらず、妻の旧姓を日常的に名乗っている資料があれば、その資料を提出します。
※戸籍と異なる名前を名乗ることを通称名と言います。通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。
資料としては次のようなものがあります。
・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・SNS(LINEやFacebookなど)
・契約書
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)
過去の判例
婚姻後、姓を変更した判例には次のようなものがございます。
「やむを得ない事由」が必要となるため、必要となる要件を満たさなければ認められにくい傾向にあります。
申立人は、中学生の頃から結婚しても氏を変えず「三田村」を称したいと思っており、「三田村」を称することが婚姻の条件でもあった。それ故中山透とも妻の氏を称する婚姻をした。透は妻の氏を称することに反対であったが、申立人の「三田村」姓でなければ婚姻の届出に応じないという強い主張及び感情的な態度に屈し、不承不承申立人の自由に委ねると述べ、申立人が妻の氏「三田村」を称する婚姻の届出をしたのであった。しかし透の住居地においては、夫が妻の氏を称することは、一般に、いわゆる婿養子となることを意味するものであったので、透は上記届出をしたことを後悔し、両親にもそのことを話せないままでいた。そして届出の数日後に、申立人に対し再度の協議を申し入れ、事情を説明したところ、申立人も、透の親子関係、勤務先及び近隣における対面等を考え、「中山」を称することに同意し、婚姻届を出した約一月後の平成3年8月13日に、氏の変更の申立てをした。そして前記のとおり同年9月6日に許可された。
平成7年9月22日/宇都宮家庭裁判所/審判/平成7年(家)153号
改名許可後の手続きについて
無事に苗字を変更することができた後はどういった手続きをする必要があるのでしょうか?
一般的には次のような手続きをする必要があります。
1.戸籍謄本、住民票の変更
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更
改名許可後の手続きについては「改名許可後の手続き」で詳細に記載しておりますので、ご参考下さい。
まとめ
以上、夫婦の苗字を妻の旧姓に変更する方法を記載させて頂きました。
夫婦の姓を変更されたい方、手続きを専門家に依頼されたい方は、是非司法書士事務所エベレストまでご相談下さい。