離婚をすると「苗字」と「戸籍」はどうなるのでしょうか?
離婚後の戸籍謄本を「見本付き」で離婚歴や子供の戸籍について解説します。
※該当される方は次の記事もご参考下さい。
「離婚後、子供が大きくなってから旧姓に戻すには?」
「離婚後、苗字を変える人と変えない人の割合は?」
「親権を定めたら戸籍にはどのように記載されるの?」
目次
離婚すると苗字はどうなるの?
離婚をすると苗字は次のようになります。
婚姻時、苗字を変えていない人
…離婚後、苗字はそのまま(変わらない)
婚姻時、苗字を変えた人
…原則:婚姻前の姓(旧姓)に戻る
…例外:離婚日から3カ月以内に「婚氏続称の届出」を役所に提出することで、婚姻時の姓を名乗ることができます
※離婚相手の同意は不要です
結婚した際、筆頭者となり苗字を変えなかった人は、離婚しても苗字に変更はありません。
一方で結婚した際、相手の籍に入り苗字を変えた人は、離婚すると婚姻前の姓(旧姓)に戻すか結婚時の姓を継続するかを選択することになります。
離婚後も婚姻時の姓を名乗るには?
離婚後も婚姻時の姓を名乗る場合、離婚日から3カ月以内に下の届出を役所に提出します。
多くの場合、離婚届出と一緒に提出をされています。
役所にも婚氏続称届の書類はございますが、事前に記入されたい方などは、こちらからひな形をダウンロード下さい。
離婚後も婚姻時の姓を名乗る人の割合は?
離婚した場合、結婚時の苗字を名乗られる人より旧姓に戻す人の方が多いようです。
「654人の女性にアンケート|婚姻時の姓を選択する割合とその理由」に詳しい内容を記載しておりますのでご参考下さい。
離婚後、しばらくしてから旧姓に戻すには?
原則、離婚時に苗字を変更する場合、役所での手続きで完了しますが、次の場合は、苗字を変更するために「家庭裁判所の手続き」が必要となります。
①離婚日から3か月以降に旧姓から婚姻時の姓に変更する場合
②婚姻時の姓から旧姓に変更する場合 ※
※婚氏続称届を提出し婚姻時の氏を選択された方が旧姓に変更する場合、離婚日から3か月以内であっても家庭裁判所の手続きが必要となります。
旧姓や婚姻時の姓に変えるための家庭裁判所の手続きについては「離婚後、確実に婚氏を旧姓に戻すには? 」「離婚後、旧姓から婚姻時の姓に変更するには?」に詳細に記載しておりますのでご参考下さい。
離婚すると戸籍はどうなるの?
離婚した際に戸籍は次のようになります。
婚姻時、苗字を変えていない人
… 戸籍に離婚の事実が記載され、配偶者が戸籍から出ていく
(離婚により新しい戸籍は作成されない)
婚姻時、苗字を変えた人
… 原則:婚姻前の戸籍に戻る(復籍)※1
… 例外:次の場合、新しい戸籍が作成される
①婚姻前の戸籍に戻れない場合 ※2
②旧姓に戻す際、新戸籍作成を申し出た場合
③婚姻時の姓を名乗り続ける場合
※1 復籍した人が、後に新戸籍を作成することはできますが、反対に、新戸籍を作成した人が、婚姻前の戸籍に戻ることはできません。
※2 婚姻前の戸籍にいた人が全員死亡しているなど戸籍が除籍されている場合
離婚届には上記のような記入欄があり、この項目を記入することで婚姻前の戸籍に戻るか新しい戸籍を作るか選択をすることができます。
婚姻時の姓を続称する人は、この箇所は空白にして「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すれば問題ありません。
離婚後の戸籍の見本
離婚後の戸籍にどのような記載がされるかを「結婚時に改姓していない人」「改姓した人」で分けて説明させて頂きます。
結婚時に改姓していない人
結婚時に姓を変更してない人は、戸籍の筆頭者であるため、離婚後、新しい戸籍は作られず、下の内容が身分事項に記載されるのみです。
身分事項:離婚
【離婚日】令和●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
結婚時に改姓された人
結婚時に姓を変更し相手の戸籍に入った人は、離婚後、復籍先の戸籍謄本や新しく作られる戸籍謄本には、次のように記載されます。
身分事項:離婚
【離婚日】令和●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
【従前戸籍】●●●●(本籍地)▲▲▲(筆頭者)
※本籍地と違う役所へ離婚届を提出した場合、次のような文言も記載されます。
【送付を受けた日】令和●年●●月●●日
【受理者】■■市長
身分事項:離婚
【離婚日】令和●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
身分事項:氏の変更
【氏変更日】令和●年●●月●●日
【氏変更の事由】戸籍法77条の2の届出
【従前戸籍】●●●●(本籍地)▲▲▲(筆頭者)
※本籍地と違う役所へ離婚届を提出した場合、次のような文言も記載されます。
【送付を受けた日】令和●年●●月●●日
【受理者】■■市長
結婚時の姓を名乗り続ける場合のみ、戸籍の身分事項に「氏の変更」の事実が記載されます。
苗字は変わらないのに「氏の変更」と記載される?
離婚後、婚姻時の姓を名乗り続ける場合、身分事項に「氏の変更」と記載されます。
この「氏の変更」とは、旧姓に戻した後で婚姻時の「氏に変更」したという意味合いです。
一方、旧姓に戻す場合、身分事項に「氏の変更」とは記載されません。
従前戸籍とは?
離婚後の戸籍に記載されている「従前戸籍」とは、前に入っていた戸籍のことを言います。離婚後の戸籍の場合、基本的に「従前戸籍」は、婚姻中の戸籍です。
戸籍謄本に「離婚」の事実が記載されていない?
離婚をしたにも関わらず、戸籍謄本を取得し「離婚」の記載がないことはあるのでしょうか?これは、離婚後に転籍や分籍を行っているため、記載がされていない可能性があります。詳細は、後述の「離婚歴を消す方法は?」をご参考下さい。
離婚後の戸籍の見本(旧戸籍)
結婚時に姓を変更した方は、離婚をした際、戸籍から出ていきますが、もといた戸籍謄本(離婚相手の戸籍)には、次のように記載がされます。
身分事項:離婚
【離婚日】令和●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
【新本籍】●●●●(本籍地)▲▲▲(筆頭者)
※本籍地と違う役所へ届出した場合、次のような文言も記載されます。
【送付を受けた日】令和●年●●月●●日
【受理者】■■市長
身分事項:離婚
【離婚日】令和●年●●月●●日
【配偶者氏名】▲▲▲
身分事項:氏の変更
【氏変更日】令和●年●●月●●日
【氏変更の事由】戸籍法77条の2の届出
【新本籍】●●●●(本籍地)▲▲▲(筆頭者)
※本籍地と違う役所へ届出した場合、次のような文言も記載されます。
【送付を受けた日】令和●年●●月●●
【受理者】■■市長
先ほどと同様に旧姓に戻す場合、身分事項に「氏の変更」とは記載されませんが、結婚時の姓を続ける場合、身分事項に「氏の変更」と記載されます。
離婚日は、いつになるの?
戸籍に記載される離婚日とは、いつの日付になるのでしょうか?
協議離婚…役所への届出した日
離婚調停…調停が成立した日
裁判離婚…裁判が確定した日 ※
※裁判離婚の場合、離婚日は判決の日ではなく、判決が確定した日になります。
詳しい計算方法は「判決の確定日はいつ?」をご参考下さい。
離婚後の戸籍謄本は、いつ取得できるの?
離婚届の提出後、離婚の事実が記載された戸籍謄本は、いつ取得できるのでしょうか?
離婚届出を本籍地の役所に提出
…当日~1週間ほど
離婚届出を本籍地でない役所に提出
…1週間~2週間ほど
※届書等を本籍地の役所へ送付する必要があるため
上記内容はあくまで目安ですので正確な日数を確認されたい方は本籍地の役所へご確認下さい。
戸籍にバツイチ、バツニなどバツ(×)は記載される?
昔は離婚などにより戸籍から出ていくと戸籍から出た人の名前の上に「バツ(×)」が記載されていました。
バツイチ、バツ二などの「バツ(×)」とは、この戸籍から出て「バツ(×)」されたことから来ています。
しかしながら、現在の戸籍には離婚をしても名前の上に「バツ(×)」はされず、名前の横に「除籍」と記入をされるだけです。
離婚歴を消す方法、隠す方法は?
戸籍に記載される「離婚」の事実は、「転籍」や「分籍」をすることで新しい戸籍が作成され、新しい戸籍には記載されなくなります。
転籍届・分籍届とは?
転籍届、分籍届を役所に提出することで新しい戸籍が作成されます。
転籍届や転籍後の戸籍謄本の見本については「転籍届とは?」をご参考下さい。
分籍届や分籍後の戸籍謄本の見本については「分籍届とは?」をご参考下さい。
また様々な手続き後の戸籍の見本をご覧になられたい方は「分籍や転籍など様々な手続き後の戸籍の見本一覧」をご参考下さい。
転籍、分籍をすると「離婚」の事実は消えるの?
転籍や分籍をすることで新しい戸籍が作成され、新しい戸籍には「離婚」の事実は記載されません。
ただし、新しい戸籍ができたとしても転籍や分籍前の除籍には「離婚」の事実が記載されています。この転籍や分籍前の除籍の「離婚」の事実は消せないので、分籍や転籍前の戸籍を請求すると「離婚」の記載ある戸籍謄本が発行されます。
また転籍届を提出する場合、本籍地を管轄する役所内で転籍をすると新しい戸籍はできませんので、新しい戸籍を作る場合は、同じ役所内での転籍とならないように注意しましょう。
転籍をしても新しい戸籍に引き継がれる内容がある
離婚後も婚姻時の姓を続称する選択をされた方は、転籍をしても「氏の変更」の事実は新しい戸籍に記載されます。
そのため旧姓に戻した人が転籍した場合、引き継がれる内容はありませんが、婚姻時の姓を続称した人が転籍した場合、「離婚」の事実は引き継がれませんが、「氏の変更」の事実は、転籍後の新しい戸籍にも記載されます。
交際相手に離婚した事実は分かるの?
戸籍謄本を請求できるのは、原則、ご本人・配偶者及び直系血族(祖父母・父母・子・孫等)の方のみとなります。
そのため交際相手と結婚をした場合は、相手は戸籍を請求できますが、結婚されていない交際相手の方から戸籍を請求することはできません。
ですので、交際相手が戸籍を取得し離婚の事実を知るという事は基本的にございません。
戸籍の見本(裁判所で苗字を変更した場合)
離婚後、婚姻時の姓を選択した人が旧姓に変更する場合など家庭裁判所の許可を得て旧姓・婚姻時の姓へ変更した場合、次のように戸籍に記載されます。
戸籍事項:氏の変更
【氏変更日】令和〇年〇〇月〇〇日
【氏変更の事由】戸籍法107条1項の届出
【従前の記録】(空白)
【氏】〇〇
この場合、筆頭者が苗字を変更することで、戸籍に入っている世帯全員の苗字が変更されます。
その他の戸籍に関する手続き後の戸籍の見本をご覧になられたい方は「分籍や転籍など様々な手続き後の戸籍の見本一覧」をご参考下さい。
離婚後、子供の苗字はどうなるの?
原則:そのまま
例外:家庭裁判所の手続きをすることで旧姓に戻した親と同じ旧姓を名乗ることができる
※成年、未成年で違いはありません。
親権者が離婚後、旧姓に戻したとしても、子どもの苗字が自動的に旧姓に変更される訳ではありません。
子供が旧姓に戻した親権者の戸籍に入る事で、子供の苗字も親権者と同じ苗字になります。この親などの戸籍に入る事を「入籍」と言います。
子供が親の戸籍に入籍するには次の手続きが必要となります。
① 「子の氏の変更許可申立」を家庭裁判所で行う。
② 変更許可後、役所へ入籍届出を提出する。
子どもの苗字を変更する家庭裁判所の詳しい手続きは、「子の氏の変更手続き」をご参考下さい。
子供の苗字を変えない方法は?
離婚をしたが、子供の生活環境に影響を与えたくないので、子供の苗字を変えたくないという方は多くいらっしゃいます。
親権者の方が婚姻時の姓を継続する場合と旧姓に戻す場合に分けて子供の苗字を変更しない方法をまとめました。
次の内容は親も子供も婚姻時の姓を名乗る場合です。
・親権者が婚姻時の姓を選択し、新しい戸籍ができた後に子供に入籍してもらう
※子供の年齢に関わらず入籍できます。
次に親権者のみ旧姓へ変更し、子どもは婚姻時の姓を名乗る場合です。
子どもが元配偶者の戸籍に残っている場合
・元配偶者の戸籍にそのまま残ってもらい、親権者は旧姓へ変更
子どもが自分の戸籍に入っている場合
・現在の戸籍から子供が分籍した後、旧姓へ変更
※分籍は子供が18歳以上である必要があります。令和4年4月1日の民法の改正により、20歳から18歳に引き下げられました。
・元配偶者の戸籍に入籍した後、旧姓へ変更
※子供の年齢に関わらず入籍できます。
ただし、元配偶者が再婚等している場合、その相手の同意が原則必要です。
上記の方法で親権者と子供が別々の苗字を名乗る事ができます。
離婚後、子供の戸籍はどうなるの?
離婚後の戸籍謄本に子供の記載はない?
原則:そのまま
例外:家庭裁判所の手続きを行うことで親権者等の戸籍へ入籍できる
※成年、未成年で違いはありません。
離婚しただけでは、子供の戸籍には何の変動もないため、自動的に親権者の戸籍に入ることもなく、子供の身分事項に記載される内容も何もありません。
そのため親権者の戸籍に子供を入籍させるには、家庭裁判所で「子の氏の変更手続き」を行う必要があります。
詳しい手続きは「子の氏の変更手続きを丁寧に解説|父の姓から母の姓へ変えるには?」をご参考下さい。
入籍後の戸籍の見本(新戸籍)
子どもが母親の戸籍などに入籍した際、入籍先の戸籍には次のように記載されます。
身分事項:入籍
【届出日】令和〇年〇〇月〇〇日
【入籍事由】母(父)の氏を称する入籍
【従前戸籍】〇〇〇〇(本籍地)△△△(筆頭者)
入籍後の戸籍の見本(旧戸籍)
子どもが親権者の戸籍に入籍するなど、戸籍から出ていく場合、もといた戸籍謄本には、次のように記載がされます。
身分事項:入籍
【届出日】令和〇年〇〇月〇〇日
【除籍事由】母(父)の氏を称する入籍
【入籍戸籍】〇〇〇〇(本籍地)△△△(筆頭者)
子供の戸籍をそのままにするメリット・デメリット
離婚した後、子供と親権者が別々になる場合、子供を親権者の戸籍に入籍させるのが一般的ですが、子供の入籍手続きをせずに、そのままにする場合どのようなメリットデメリットがあるのでしょうか?
(詳しい内容は「離婚後、子供の戸籍を父親に残すメリット、再婚時の注意点を解説」もご参考下さい。)
・親権者は旧姓に戻し、子供は婚姻時の姓を名乗れる
親権者と子供が別々の戸籍になっていることで、別々の姓を名乗る事ができます。
この点が大きなメリットだと言えます。
なお、子供と親権者が別々になり、入籍手続きをせず子供の戸籍をそのままにしても罰則等はございません。
①戸籍が別々になる違和感
②再婚した際、元夫に再婚相手の本籍地と名前がばれてしまう
③子供の戸籍謄本を請求する際に、面倒になる場合がある
①戸籍が別々になる違和感
親権者の母親と子供の戸籍が別々になることで、スッキリしないという方もおられるかもしれません。
②再婚した際、元夫に再婚相手の本籍地と名前がばれてしまう
子供が再婚相手の戸籍に入籍する際は、戸籍の子供の欄に「再婚相手の本籍地、筆頭者」が記載されます。そのような記載を避けるのであれば、再婚する前に親権者の戸籍に入籍するなどの方法があります。
③子供の戸籍謄本を請求する際、手間になる場合がある
母親と父親の本籍地が異なる場合、母親と子供の戸籍を請求する際、それぞれの本籍地に戸籍を請求する必要があるので、面倒と思われるかもしれません。
まとめ
以上、離婚した場合の戸籍、苗字について記載させて頂きました。
これから手続きをされる方など、是非ご参考下さい。
旧姓へ変更の変更手続きについては、「確実に旧姓へ戻す手続き」の記事もご参考下さい。