・子供を自分の戸籍に入れたい
・父の姓から母の姓に変えたい
・親の苗字を引き継ぎたい
離婚をすると夫と妻は別々の戸籍となり、子供はどちらかの戸籍にいる状態となります。
そのため、子供を離婚相手の戸籍から自分の戸籍に入籍させるには、離婚届出とは別の手続き「子の氏(このうじ)の変更許可申立」が必要となります。
この記事は、その「子の氏の変更許可申立」について詳しく解説しております。
※次のような記事もあります。該当される方はご参考下さい。
「離婚後しばらくしてから旧姓に戻すには?」
「離婚したら苗字、戸籍はどうなるの?」
「離婚後、子供の戸籍を父親に残すメリットは?」
「離婚した夫が名付けた子供の名前を変更するには?」
目次
子の氏の変更手続きについて
どんな手続きが必要?
お子様を自分の戸籍に入籍させるには、原則、家庭裁判所で「子の氏の変更許可申立」の手続きをした後に、役所へ入籍届を提出する必要があります。
【例外】裁判所の手続きが不要な人
例外的に「子の氏の変更許可申立」の手続きなく、父又は母の籍に入籍できるのは次の2通りです。
・父、母などの法定代理人により「子の氏の変更許可申立」がされ、その子が成年に達してから1年以内に変更前の苗字に変更する場合
民法791条4項
具体的な例でいうと、法定代理人である母が15歳未満である子供の「子の氏の変更許可申立」を行い、子供を父の戸籍から母の戸籍に入籍させ母の氏に変更した場合、子が成年(18歳)になってから1年以内であれば、子供は再度変更前の苗字に戻すことができ、その際、家庭裁判所の許可は不要となります。
※2022年4月1日から、成人年齢が引き下げられました。2022年4月1日の時点で18歳、19歳の方は、この日に成人したことになり、2023年3月末までであれば家庭裁判所の許可は不要となります。
・父母が婚姻中であり、父または母が苗字を改めたことにより子が父母の苗字と異なってしまった場合
民法791条2項
上記の内容に該当する例を具体的に説明します。
養子縁組により姓が変わった場合
①鈴木家族と遠い親戚の佐藤一郎さんがいます。
②佐藤一郎さんが、筆頭者の鈴木二郎さんを養子縁組することで、鈴木夫妻は自動的に現在の戸籍から除籍され新しい「佐藤」姓の戸籍が作成されます。
しかしながら、お子様の鈴木三郎君は、鈴木夫妻が除籍された戸籍謄本に残ったままとなり、苗字も鈴木のままとなります。
このような場合、三郎君は、「家庭裁判所の許可を得ることなく」、市区町村役所へ届け出をするだけで、両親の戸籍に入籍し「佐藤」姓へ変更することができます。
一方で佐藤一郎さんが、筆頭者でない奥様を養子縁組をしても鈴木夫妻は戸籍から除籍されず、苗字も変更されません。
簡単に変更できるの?
次の判例のように、一般的な苗字・名の変更ほど厳格な要件ではなく、「子の氏の変更許可申立」は基本的に家庭裁判所の許可は得られやすい傾向にあります。
戸籍法第一〇七条の如く氏の変更につき「やむを得ない」場合に限定せず、父母の氏への変更は原則として許可し、ただそれが個人の同一性識別と従つて取引の安全を害する場合に限り氏変更を制限すべきものとなるところ、本件申立によればそれが亡父の氏への変更だけに、一般改名と異り同一性の識別を困難ならしめることは少なく、また仮りにあつたとしても申立人本人が望むところなるが故に、その不便は申立人本人において甘受すべきである。
ただし次のような内容では、許可が下りやすい内容とは言えず、注意が必要となります。
①認知された子が父の氏に変更する場合
②本妻がいる父の氏に内縁の妻の子が変更する場合
③申立人が現に婚姻している
④申立人の年齢が満30歳以上
⑤入籍する戸籍に15歳以上の同籍者がおり、子の氏の変更について同意していない場合
⑥過去に申立人が自ら子の氏の変更の申立てを行っている場合
※ただし、親権者等の法定代理人が申立していた場合や親権者が変更されその親権者の戸籍に入籍する場合を除く
その他、入籍する理由が破産・犯罪経歴を隠すためなど、申立の理由によっても許可が下りにくくなる場合もございます。
手続きする人は?
家庭裁判所で子の氏の変更申立ができるのは、次の方です。
・子供
・法定代理人(親権者等、子が15歳未満の場合)
子が15歳未満であれば、子供が家庭裁判所へ出廷等する必要なく法定代理人(親権者等)のみで全ての手続きに対応できます。
申立人が15歳以上の場合、手続きはどうなるの?
申立人となる子供が成人しているなど15歳以上の場合、裁判所への出廷は本人が行う必要がございますが、申立書の作成などは親の協力のもと進めることが可能です。
また手続きの進め方は基本的にお子様が15歳未満の場合と変わりません。
どこで手続きするの?
子の氏の変更申立は子の住所地の家庭裁判所で行います。
※複数の子の申立をする場合,そのうちの1人の子の住所地の裁判所で行うことができます。
申し立てをする家庭裁判所が、どちらになるかは「裁判所の管轄一覧」をご参考下さい。
申し立ては郵送でもできるの?
「子の氏の変更許可申立」は必要な書類が揃っているのであれば、裁判所に出向いて提出する必要はなく、郵送で裁判所に提出することも可能です。
裁判所へ郵送する場合、送付方法は普通郵便などでも問題ありません。
裁判所に提出する際、返信用封筒は必要?
家庭裁判所に子の氏の変更許可申立をする場合、郵便切手や収入印紙を提出する必要はありますが返信用封筒を提出する必要はなく、家庭裁判所が封筒を用意してくれ、何か書類が送付される際は家庭裁判所の封筒で送付されます。
費用・料金は?
1.収入印紙800円
※入籍する子1人につき
2.郵便切手84円~300円ほど
※家庭裁判所での実費を記載しており、郵送費、交通費、戸籍謄本代などは除いております。
郵便切手の金額は、お子様の人数、ご年齢、管轄の裁判所によって金額は異なります。
管轄の家庭裁判所に連絡をして、「子の氏の変更手続きで、郵便切手の金額を教えて頂きたいのですが」とお伝えすると、口頭で金額をお伝え頂けます。
子の氏の変更 (お子様がおひとりの場合) | 郵便切手の金額 |
東京家庭裁判所 | 84円×3枚 10円×3枚 |
札幌家庭裁判所 | 84円×1枚 |
名古屋家庭裁判所 | 84円×1枚 |
大阪家庭裁判所 | 84円×3枚 |
福岡家庭裁判所 | 84円×1枚 |
※支局によっても金額が異なります。
※使用しなかった切手は、手続き後返却されます。
※2020年9月3日更新
期間・日数は?
改名にかかる期間は、どのくらいかかるのでしょうか?
こちらの内容は、あくまで名古屋家庭裁判所の手続きの目安期間です。
管轄の裁判所によっては、期間の違いはあります。
それぞれ細かい部分も見ていきましょう。
一般的な期間:3日~20日
※例外(複雑な事例):25日~60日
1.家庭裁判所へ申立準備:1日~7日 ※①
2.家庭裁判所の手続き:1日~10日 ※②
3.役所の手続き:1日~7日 ※③
※①戸籍謄本の取得、申立書の作成等
※②照会書の提出、審問、審判書の通知等
(ほとんどが申立後、書面照会・面談なく許可されるケースが多いです)
※③戸籍謄本の取得、氏・名の変更届の提出等
許可後の手続きについては、「お名前変更許可後の手続きについて」もご参照ください。
即日審判とは?
子の氏の変更申立をした当日に審判して頂くことを「即日審判」といいます。
即日審判では、許可審判書を当日交付して頂けるケースが多いですが、家庭裁判所によっては、審理は当日するが、審判書は後日郵送するなど、対応方法が変わってきますので、詳細を知られたい方は、管轄の家庭裁判所にご確認下さい。
また「注意が必要な複雑な事例」などでは即日審判が厳しい場合もございます。
必要な書類は?
子の氏の変更申し立てを家庭裁判所にする場合に必要となる書類は次の通りです。
①申立書
家庭裁判所へ子の氏の変更を申立するには「申立書」が必要となります。
「申立書」は家庭裁判所でもらうこともできますし、こちらからダウンロードしたものも使用できます。印刷される場合、A4の白紙で印刷しましょう。
申立書の記載例、申立理由
この記載例は、家庭裁判所のHPにあげられているものになります。
1P目の内容については、そのまま埋めていけば問題ありません。2P目の内容については注意が必要な人とそうでない人がいます。
記載例にもある通り、離婚によって同居している父又は母と苗字が異なることになった場合、基本的に許可されることが多いです。
一方で先ほど説明しました注意が必要なケース、複雑な事例などについては、申立理由の内容によっては却下される場合があるので注意して申立理由を作る必要があります。
②③申立人・父母の戸籍謄本
子の氏の変更申立では、子供の戸籍謄本、父母の戸籍謄本が必要となります。
子供と親が同一の戸籍にいる場合は、1通で親子の戸籍を兼ねることができます。
また戸籍謄本については、発行から3か月以内のものである必要があります。
本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
海外に在住されている方など、郵送ですら厳しい場合は、氏名変更相談センターで代行取得することが可能です。
⑤変更の理由を裏付ける資料
原則的には、上記①~④の資料で問題ありませんが、変更許可が難しいような次のような案件などの場合、変更の理由を裏付ける資料が必要となります。
資料については、申立理由によって添付すべき資料が異なり、例としては、次のようなものがございます。
・通称名を名乗っている場合
この場合の変更の理由を裏付ける資料としては、昔から今現在まで通称名を使用していたことが分かる書類のコピーを提出します。
通称名については、「通称名へ改名するための大事なポイント」をご覧ください。
・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・契約書
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)
⑥同意書
子の氏の変更の申し立てにあたって、入籍する戸籍に15歳以上の人(配偶者、子供)が同籍されている場合、そこに子が入籍する際には、その人の同意書が原則必要となります。
例外的に要件を満たしていれば、子の氏の変更許可が下りることもありますが、原則として同意書が無ければ変更許可は厳しいものとなります。
家庭裁判所への申立後の手続きについて
申立後にすることは?
子の氏の変更申し立ての場合、基本的には申立後に下記の手続きなく審判をして頂けますが、内容が複雑な場合など、申立後に次のような対応を求められる場合がございます。
必ずどちらも行われるという訳ではありません。
書面照会だけ、審問、参与員の聴き取りだけ行われる場合もあれば、全て行われる場合、何も行われない場合もあります。
管轄の家庭裁判所が、どの手続きをするかのを決めていくので、申し立てをした後は、家庭裁判所から連絡を待ちしましょう。
書面照会、審問とは?
書面照会、参与員の聴き取り、審問とはどういった手続きなのでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
書面照会(照会書)とは?
子の氏の変更申立後、家庭裁判所から上記のような書類が送られてくる場合がございます。
書面照会とは、申立後、裁判所が確認したい内容を書面で送付され、その質問の内容について書面で返答することをいいます。
裁判所宛の返信用封筒も付いており、内容を記載し一定の期日(基本的には2週間)までに返送します。
「家庭裁判所から来た照会書・回答書の書き方と注意点」もご参考下さい。
審問・参与員の聴き取りとは?
子の氏の変更の申し立てをすると、家庭裁判所から面談のための期日調整の連絡がある場合がございます。その日程が決まると上記のような書類が送られてきます。
審問・参与員の聴き取りとは、申立人や法定代理人が家庭裁判所に出廷し、参与員・裁判官から確認したい内容について質問され、それに答えていく手続きの事をいいます。
聞かれる内容やどのような点に注意すべきかは、「裁判所の面談で一番注意する事と質問内容」をご参考下さい。
結果の連絡方法は?
子の氏の変更申し立ての場合、申立当日に審判書を頂く場合もあれば、面談等を行った後に郵送で通知される場合もございます。
基本的には、申立後1週間程度で通知されることが多いです。
市区町村役所の手続きについて
無事に子の氏の変更が許可された後は、 入籍届を本籍地または所在地の市区町村役所へ提出する必要があります
入籍届を提出することで戸籍謄本の名前、住民票の名前が変更されます。役所への入籍届には期限がありませんが、役所によっては、審判がおりて届出までに2週間以上経過をしている場合は、その理由を求めるところもあります。
改名後の手続きの一例として次のものがあります。
1.戸籍謄本、住民票の変更
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更
具体的に細かいお手続きの内容は「名前の変更許可後の手続きを徹底解説!改名した戸籍謄本の画像あり」をご参考下さい。
入籍後の戸籍(見本)
子の氏の変更申立後、子供が母親などの戸籍に入籍した際、入籍先の戸籍には次のように記載されます。
離婚後の戸籍の見本や子供を元夫の戸籍に残すメリットデメリットなどは「離婚後・入籍後の戸籍謄本【見本あり】」をご参考下さい。
その他の戸籍に関する手続き後の戸籍については「分籍や転籍など様々な手続き後の戸籍の見本一覧」もご参考下さい。
子供の名前の変更手続き
子供の名前を離婚相手がつけた名前であるため、変更されたい場合などは「赤ちゃんの名前の変更方法」「キラキラネームの改名方法」もご参考下さい。
また名前の変更手続きの流れは「苗字・名前の変更手続き流れ」をご参考頂き、旧姓に変更されたい方は「離婚後、婚氏を旧姓に戻す方法」をご参考下さい。
まとめ
子の氏の変更申し立てを検討されている方が、この記事を読まれて少しでも参考になればと思います。とても長い文章をお読み頂きありがとうございました。