家庭裁判所へ氏の変更を申立するにあたって、変更を認めてもらうには、その理由が「やむを得ない事由」でなければなりません。
それでは、いったいどのような理由が「やむを得ない事由」というのでしょうか?
この記事では「やむを得ない事由の例」と「氏の変更で認められやすい理由・認められにくい理由」を解説します。
目次
やむを得ない事由とは?
そもそも、どうして苗字を変更する際に「やむを得ない事由」が必要なのでしょうか?
それは、戸籍法に次のような記載があるからです。
「氏の変更」 戸籍法第107条
やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
そのため苗字を変更したい人は、家庭裁判所から「やむを得ない事由」があると判断してもらわないと、苗字の変更を許可してくれません。
それでは、家庭裁判所は、どのような観点から「やむを得ない事由」があると判断するのでしょうか?
裁判所のHPでは「やむを得ない事由」とは「氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合」としており「単なる個人的趣味,感情,信仰上の希望等のみでは足りない」としております。
また過去の判例では、次のような観点からも判断されています。
・動機の正当性
・氏の変更の必要性
・氏の変更による社会的影響
つまり、やむを得ない事由というのは、「氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障を来す場合」を言い、それは「単なる個人的趣味,感情,信仰上の希望等のみでは足りず」、「動機の正当性」や「氏の変更の必要性」、「社会的影響」なども判断材料となります。
それではやむを得ない事由にはどのようなものがあるのでしょうか?
やむを得ない事由の例
やむを得ない事由の具体例としては、どのようなものがあるのでしょうか?
次の内容は家庭裁判所が例に挙げているものです。
「やむを得ない事由の例」
1.婚姻前の氏に戻したい
2.婚姻中に称していた氏にしたい
3.外国人の配偶者の氏にしたい
4.奇妙な氏である
5.難しくて正確に読まれない
6.通称として永年使用した
7.外国人の父・母の氏にしたい
8.外国人の配偶者の通称にしたい
ただし、これらは家庭裁判所が上げている具体例であり、「この理由に該当すれば許可が降りるというわけではありません」。
具体的な例で言うと「難しくて正確に読まれない」とありますが、難しく読みにくい苗字であったとしても、やむを得ないという支障を来たしていなければ、却下される可能性が高いです。
紛らわしいですが、これらはあくまで例であり、それをもって認めるというわけではありません。
それではいったい、どのようなものが認められやすい理由、認められにくい理由となるのでしょうか?
認められやすい氏の変更理由
過去の判例上、認められやすい傾向の理由の例としては次のようなものがあります。
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※あくまで一般的な傾向です。ご自身の状況や裁判所によって変わってくる場合がございます。
過去の判例や弊所での経験上、簡単には認められない理由としては次のようなものがあります。
「簡単には認められない理由」
・子供が親の旧姓に苗字を変更
・結婚後、離婚せず妻の旧姓に変更
・帰化後に日本風の苗字に変更
・複合姓(ダブルネーム)への変更
認められにくい理由としては次のようなものがあります。
「認められにくい理由」
認められにくい理由で氏を変えようと思われている方は、それだけでは変更は難しい場合が多いので、どうしても変更されたい場合は、通称名の実績を積んでいただく方法になってくるかと思います。
通称名のみを理由として氏を変更する場合、基本的には10年以上の実績が求められる場合が多いので簡単なことではありませんが、どうしても変えられたい方はそのような方法があります。
まとめ
氏の変更で必要になるやむを得ない事由の例を記載させていただきました。
比較的に許可されやすい理由となるものもあれば、厳しいものもあります。
弊所では次のような記事もございます。ご参考下さい。
「苗字・名前の改名手続きを丁寧に解説」
「改名理由を徹底解説!変更許可される理由の書き方は?」
弊所では、家庭裁判所の改名手続きを中心に業務を行っております。
改名手続きを専門家にお願いされたい方は、司法書士事務所エベレスト大阪までお気軽にご相談下さい。