「過去に付き合っていた相手が、ストーカー行為を行うようになった」
「DVを行っている交際相手から身を隠したい」
「ストーカーから身を隠して生活していたのに、会社で名前を公表しなければいけなくなった」
DV相手、ストーカーの被害にあっている人が、被害にあわないために改名をしたいというご相談を頂くことがあります。
DVやストーカーにあっている人が身を守る方法、身を隠す方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
この記事では「身を隠す方法、相手と距離をとる方法」と「本名の変更方法」を解説します。ご参考下さい。
目次
DVとは?
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、直訳すると「domestic=家庭内の」「violence=暴力」となり、「配偶者や交際相手などの親密な関係にある人、関係のあった人からの暴力行為」という意味で使用されることが多いです。
ストーカーとは?
ストーカーとは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、つきまとい、まちぶせ、押しかけや無言電話などをする人」を言います。
DV・ストーカーの相手にできること
DVやストーカー行為にあっている人が相手に対してできることには次のようなものがあります。
・住民票等の閲覧・交付の制限を設ける
・裁判所へ保護命令(接近禁止命令)の申立てをする
・警察へストーカー規制を申し出る
・相手の知らない場所へ引っ越しをする
・携帯電話の番号を変える
・職場を変える
・SNSなどのアカウントを変更する
・別の苗字・名前で生活をする
・戸籍上の苗字・名前を改名する
この記事では、この中でも役所や裁判所での手続きについて解説します。
住民票の取得に制限をかける(支援措置)
DVやストーカー相手から不当に住民票の請求をされ、住所地が判明されるのを防ぐために、役所に住民票・戸籍の附票等請求の制限する手続きをしましょう。
この申し出をしていることで、相手から不当に住民票の請求をされることを阻止することができます。
なお詳しい内容については、総務省の記事もご参照ください。(総務省HP)
住民票等の閲覧制限の申立先
申立先は次の通りです。
・住民票の制限:住民票のある市区町村役所
・戸籍の附票の制限:戸籍の附票のある市区町村役所
(戸籍の附票とは?大阪市役所HP)
なお、引っ越しをされる際は、転入届出と一緒にする必要があります。
詳しい手続きについては、それぞれの市区町村役所に問い合わせてみましょう。
住民票等の閲覧制限の期間
支援措置の期間は、申し立てをしてから永久に続くわけではなく、閲覧制限の結果を申出者に連絡した日から起算して1年のみ有効です。
期間を延長する場合は、期間終了の1か月前から、延長の申出をすることで延長することができます。
延長後の期間は、延長前の期間の終了日の翌日から1年間有効となります。
裁判所へ保護命令(接近禁止命令)の申立てをする
配偶者や元配偶者、内縁関係の人から身体への暴力を振るわれるのを防ぐために裁判所へ保護命令を申し立てることができます。
この申し立てができるのがあくまで配偶者などになってきますので、見知らぬ人にこの申立はできません。
この申立で出来る事は次の通りです。
①接近禁止命令
…6か月間つきまとったり,住居や勤務先付近を徘徊することを禁止する命令
②電話等禁止命令
…一定内容の電話やメールを制限する命令
③子への接近禁止命令
…子供の周辺をつきまとったり、学校等を徘徊することを禁止する命令
④親族等への接近禁止命令
…親族等の周辺をつきまとったり、勤務先等を徘徊することを禁止する命令
⑤退去命令
…2か月間、家から出て行くことを命じ、かつ、家の付近を徘徊することを禁止する命令
※②~④は①と同時に行うか、すでに①の命令が出ていることが前提です。
申し立てをできるのが、配偶者から身体に対する暴力を受けた、又は生命又は身体に対し脅迫を受けた被害者となります。
親族が代わりにすることはできません。
この命令に違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
詳しい内容は裁判所HPをご参考下さい。
警察へストーカー規制を申し出る
ストーカー規制法というものがあり、警察にストーカー被害にあっていることを申し立てることで相手に対して警告や禁止命令を求めることができます。
実際に、禁止命令に違反してストーカー行為をしたものは2年以下の懲役又は200万円以下の罰金となります。
被害にあっている方は最寄りの警察署に相談されて下さい。
詳しい内容は警察署HPをご参考下さい。
別の苗字や名前で生活する
戸籍上の名前とは別の名前で生活することも可能です。
戸籍上の名前とは違う世間一般に使用している名前を「通称名」と言います。
通称名を名乗ること自体、違法ではありません。通称名を名乗ることに特に手続きも必要ありません。
通称名を名乗っていくことで自分の戸籍の名前が漏れてしまうことを防いでいくことができるので、周りの人に対して戸籍の名前で居場所を追求することに効果があります。
通称名の詳しい内容は「通称名とは?通称の使える範囲や通名実績などの改名手続きを解説」をご参考下さい。
戸籍の名前を変更する
戸籍上の名前を改名し、DVやストーカーの対策をするという方法もあります。
名字、名前を改名するためには家庭裁判所で「氏の変更許可申立」または「名の変更許可申立」をして、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
より詳しい手続きの流れについては氏・名の変更のお手続きの流れをご参考下さい。
どういった場合、変更できるの?
DV、ストーカーの被害者の方が家庭裁判所で改名の手続きをした際に、どのような場合認められやすくなるのでしょうか。
改名の申立てが許可されるかどうかは次の観点から判断されます。
1.改名の動機が正当であり、必要性は高いか
2.改名による社会的影響は低いか
つまり、「いかに正当で必要性が高く、社会的に悪影響を及ぼすことがない」ことを伝えていく必要があります。
具体的には次のようなものが理由としてあげられます。
・被害にあうまでの相手との経緯
・DV等被害の経歴(例:骨折、火傷等)
・個人情報などの対策をしていること(支援措置の証明書、通称名等)
・通称名を使用している
認められやすくなる証拠書類は?
DV、ストーカーの被害者の方がいかに改名をする必要があるのかを裏付ける証拠資料が必要となります。
証拠資料として提出するものには次のようなものがあります。
・DV等被害にあってきたことが分かる書類(診断書、けがの写真など)
・個人情報などの対策をしていることが分かる書類(支援措置の証明書、通称名等)
・過去の被害についての経歴書
・通称名を使用している証拠資料
DV等被害にあってきたことが分かる書類
DV、ストーカーなど被害にあっている場合、それを証明する資料を提出することが望ましいです。
DVであれば、過去にDVを受けたことによって診断、治療してもらった診断書、その傷跡が残っている場合は、その傷跡の写真などになります。
ストーカーであれば、相手からの文書、嫌がらせの証拠写真などになってきます。
個人情報などの対策をしていることが分かる書類
DV、ストーカーなど被害にあわないために、自分の個人情報はできる限り出ていかないように対策をしているのであれば、それを証明する資料を添付した方がいいです。
例えば、「住民基本台帳の閲覧等に関する支援措置」の控え、証明書や、インターネットや友人関係で使用している通称名の資料などになります。
つまり、DV、ストーカーなどの被害にあわないための通称名の使用はそのまま通称名の資料として活用することができます。
過去の被害についての経歴書
仮に過去の被害にあったことを診断書などで証明できるものではない場合でも、その過去に合った事実を伝える方がいいです。
例えば、
・〇年〇月〇日 相手から包丁を突き付けて脅され、その際に警察沙汰になってしまった。
となります。
通称名を使用していることが分かる書類
DV、ストーカーを理由に改名する場合、短い期間でも通称名を使用していることが重要です。
変更したい名前の使用実績となる資料としては、裁判所の判断にもよりますが、次のようなものがあります。
・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・メール
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)
却下されてしまった場合の対応
万が一申し立てが却下されてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
方法としては次の方法があります。
詳しい内容については、こちらの記事をご覧ください。
改名を取下げるべき?却下された場合は?
・却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
・通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
家庭裁判所が改名の申立てについて却下をした場合、却下判決に不服がある場合、不服の申立て(即時抗告)をすることができます。
即時抗告をした場合、一旦、審判を下した家庭裁判所が審査します。明らかな間違いなどがあった際には、審判を変更する場合があります。
審判を下した家庭裁判所の判断に変更がない場合、高等裁判所で審査をした後、許可、不許可の審判を下します。
通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
却下の判断がされた後、通称名で使用実績を積んでから再度、名前の変更許可の申立てをすることが可能です。
使用実績を3年ほど積まれた後に、再度申し立てをすることをお勧めします。
まとめ
DV相手、ストーカーの被害にあっている方(特に女性)は非常に多いのですが、それを解決する方法として、被害にあっている方が身を隠すという方法がとられることが多く、根本の解決ができない方が多いです。
さらには、名字、名前の改名についても必ずできるという訳ではないので、そのような被害にあった方は、恐怖を抱えながら生活をされている方も多いのではないでしょうか。
この記事を読まれて少しでも改名手続きのご参考になったのでしたら幸いです。