この記事では「事実婚や内縁の意味、法律婚との違い、妻や子供の苗字の変更手続き」などを掲載しております。

※改名に関する次のような記事もございます。該当される方はご参考下さい。
同性婚を理由に苗字を変更する方法
夫婦で別姓を名乗る方法
【完全版】改名手続きの流れを丁寧に解説
婚姻など様々な手続き後の戸籍の見本一覧

事実婚とは?

「事実婚」とは、簡単に言うと「婚姻届出を提出していない夫婦」の関係を言います
男女が婚姻の意思をもって夫婦のように共同生活を送っているが、婚姻届出を提出していない関係のことを言います。

内縁とは?事実婚との違いは?

「内縁」は、事実婚と同じ意味です。違いがあるとすれば、それぞれ言葉の使われ方で、「事実婚」は、自分たちの意思で主体的に婚姻届出を提出していない場合の夫婦の関係で、「内縁」は、婚姻届出が提出できない状態の夫婦の関係で使われます。
婚姻届出が提出できない状態とは、例えば、山田花子さんと山田大輔さんが結婚しているが、夫婦関係は破綻していて別居しているような状態で、鈴木貴子さんが山田大輔さんと夫婦のように共同生活を送っている場合の、鈴木貴子さんと山田大輔さんの関係などをいいます。

事実婚、内縁の成立要件は?

ポイント

「事実婚」や「内縁」とは、次の要件を満たしているものをいいます。

事実婚、内縁の成立要件

①男女間に婚姻の意思がある
②夫婦として共同生活をしている

①男女間に婚姻の意思がある

婚姻の意思とは、婚姻届出を将来的に役所に提出しようという意志ではなく、夫婦として一生を共にしていく意思のことをいいます
そのため、恋人同士の同棲や愛人との生活のように、当事者たちに婚姻の意思がない場合、事実婚、内縁は成立しません。

また、結婚式をあげていたり、扶養配偶者として役所に届出をしている、相手の子を認知しているなど客観的に夫婦の関係と判断できる場合、婚姻の意思があると判断されます。

②夫婦として共同生活をしている

夫婦として共同生活しているとは、家計をひとつにした同居を何年も続けている状態をいいます
ただし、別居していても、その別居に正当な理由(仕事や病気など)がある場合、共同生活を認められる場合がございます。

法律婚との違いは?

夫婦別姓

「事実婚」や「内縁」が「法律婚」と異なる点は多くありますが、次の点が大きな違いと言えます。

法律婚との違い

①配偶者に相続権がない
②夫が認知しなければ、子供は夫の相続人とならない
③妻の苗字は変わらず、子供は妻の戸籍に入る

①配偶者に相続権がない

「事実婚」や「内縁」の妻は、婚姻届を提出しない限り、法律上の配偶者でないため、夫が亡くなったとしても原則、相続をすることができません
「事実婚」や「内縁」の妻に相続させるには、遺言書などで財産を遺贈する旨を記載する必要があります。

②夫が認知しなければ、子供は夫の相続人とならない

「事実婚」や「内縁」で生まれた子供は、当然に夫の子供にはならず、認知の届出をしなければ、子供は夫の相続人となりません

認知をすると戸籍には次のような記載がされます。

認知された子の戸籍

身分事項:認知
【認知日】○年○月○日
【認知者の氏名】夫の名前
【認知者の戸籍】○○県〇〇市△△
        夫の名前

③妻の苗字は変わらず、子供は妻の戸籍に入る

「事実婚」「内縁」の妻の苗字は婚姻届出を提出しないので、戸籍上の苗字は夫の苗字に変更されません
また子供の苗字は、生まれた際に妻の戸籍に入るため妻と同じ苗字となります

事実婚・内縁の妻や子供が夫の苗字へ変更する方法

裁判

事実婚、内縁の妻、子供の苗字を変更する方法は次の3つがあります。

苗字の変更方法

①婚姻届を提出する
②夫が妻、子供を養子縁組する 
③家庭裁判所の許可を得て改名する

※養子縁組の要件などはこちらをご参考下さい。

事実婚、内縁の妻は、婚姻届出を提出しなくとも、「家庭裁判所」が苗字を変更することを「許可」すれば、夫の苗字に変更することができます
また事実婚、内縁の子供も同様に、「家庭裁判所」の「許可」を得ることで、夫の苗字に変更することが可能です。妻の苗字は変更せず、子供の苗字のみ夫の苗字へ変更することも可能です。

それでは、家庭裁判所ではどのような手続きが必要で、どのような人は許可されるのでしょうか?
詳細な手続きの流れは「改名手続きの流れを丁寧に解説」もご参考下さい。

手続きはどこで行うの?

裁判所

それでは実際に「事実婚」「内縁」の妻、夫が相手の苗字に変更するための手続きは、どこで行うのでしょうか?

改名の申立をする家庭裁判所は、「住所地の家庭裁判所」になります。
ご自身が申し立てをする家庭裁判所がどこになるか「全国の家庭裁判所の管轄一覧」をご参考下さい。

費用・料金は?

お金

裁判=高い、というイメージですが、手続きの実費自体はそれほどしません。

改名にかかる実費

1.収入印紙800円
2.郵便切手200円~1500円ほど ※
3.(変更許可後)収入印紙150円

※申し立てをする裁判所によって郵便切手の金額は異なります。
提出する郵便切手の金額は「全国の家庭裁判所の郵便切手一覧」をご参考下さい。

改名が認められるためのポイントは?

ポイント!

過去の判例などから、事実婚、内縁の妻やこどもが苗字を変更するためのポイントをまとめました。
(参考文献:家庭裁判月報38巻1号175P~196P)

認められやすくなるポイント

通称名(夫の苗字)を長年名乗っている
・法律婚の相手との婚姻関係が事実上破綻している
・法律婚の相手が死亡している
・法律婚の相手と離婚について事実上合意している
・内縁関係の子供がおり、夫の苗字を名乗っている
・法律上の妻と内縁の妻の生活の本拠が隔たっている
・内縁関係が長期継続して夫婦として客観的に判断できる

まず、大事なことは「夫の苗字(通称名)を長年名乗っている」必要があります
※通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。

個別の事情によって、必要となる年数は変わってきますが、「10年以上」名乗られていることが理想的です

また、法律婚をされている相手などの社会秩序を乱す可能性が低い場合は、プラスの要因として認められます。

認められにくくなる点

・本妻、本夫等が苗字を変更することを反対している
・通称名(夫の苗字)を名乗っている期間が短い

法律婚をしている夫と内縁関係にあり、その夫の苗字に変更する場合、婚姻届出を提出している妻が苗字を変更することに反対している場合、改名は認められにくくなります。

そのため、そのような方は、本妻、本夫の同意を得られていることが重要となります。

これは民法上、夫婦同氏の原則があり、内縁の妻が夫の苗字へ変更することで、夫婦関係に混乱を来し、一夫一妻制、婚姻秩序に大きな影響を与える可能性があるためです。

必要な書類は?

書類2

申立書

申立書記載例
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こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。
氏の変更の申立書、子の氏の変更申立書はこちらからダウンロードすることもできます。
子の氏の変更申立書は、内縁の妻の苗字は変更せず、子供のみ夫の苗字を名乗る場合に使用します。
子の氏の変更申し立てについては「子の氏の変更手続きを丁寧に解説」をご参考下さい。

申立書の1P目の内容は該当の内容を記入していけば問題ありませんが、2P目の申立理由については慎重に作成する必要があります。

戸籍謄本

申立人の戸籍謄本を提出する必要があります。
また裁判所にもよりますが、内縁相手の戸籍謄本の提出を求められる場合も多いです。
事実婚、内縁の妻の苗字は変更せず、子供の苗字のみ夫の苗字への変更する「子の氏の変更申し立て」を行う場合、夫の戸籍謄本は必ず提出する必要があります。
戸籍謄本については、発行から3か月以内のものを求められます。

姓(名字)の変更の理由を裏付ける資料

内縁関係にある人が、改名の申立てをする場合、どのような証拠資料が必要となってくるのでしょうか?

証拠資料

通称名の資料
※相手が結婚している場合
配偶者の同意書

通称名を使用していることが分かる資料

通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。
事実婚、内縁の妻や子供が、夫の苗字に変更するには夫の苗字を名乗っていることが分かる資料の提出が必要です。

具体的には、次のような資料がございます。
公共性が高いものを中心に、年代はまんべんなくご準備ください。

通称名の資料の例

・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・SNS(LINEやFacebookなど)
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)

配偶者の同意書

内縁相手が法律上婚姻している場合、婚姻届出を提出している配偶者の同意書が必要となります。
必ず提出しないといけないものではないですが、提出をしなければ認められる可能性は低くなります。
内縁関係にある人が、婚姻関係にある人たちと同じ名字にすることは、一夫一妻制、婚姻秩序に反する可能性があるからです。

同意書の書式はどのようなものでも問題ありません。
こちらからダウンロードすることもできます。

過去の事例・判例は?

家庭裁判所

認められた判例

離婚したと偽られて同居し、以来16年余り同棲を続けてきた重婚的内縁関係にある妻が、氏の使用をめぐって強迫神経症になった子の精神的安定のため等を理由に、内縁の夫の氏への変更を申し立てた事案について、非嫡出子として生まれた子の福祉、正妻は自分の戸籍に入る方法での子の氏の変更には強く反対していること、夫婦同姓の呼称秩序の維持の比重は次第に低下していると認められること等を理由に、戸籍法107条1項に規定する「やむを得ない事由」に該当するとした事例

平成6年10月3日/京都家庭裁判所/審判/平成6年(家)638号

重婚的内縁関係にあった妻が、永年にわたり通称として使用してきた事実上の夫の氏に変更することの許可を申し立てた場合に、夫及び本妻の死亡後10年以上も経過しているなどの事情の下で、現時点では婚姻法規秩序の維持などを考慮する必要は認められないとして、戸籍法107条の「やむを得ない事由」に該当するとした事例

平成4年7月8日/横浜家庭裁判所/審判/平成4年(家)233号

重婚的内縁関係にある妻が事実上の夫と同一呼称の氏への変更を申し立てた事案において、申立人と事実上の夫との間の子らが別件として申し立てた子の父の氏への変更を許可することは父の正妻の強い反対があり相当でないが、申立人が14年間以上事実上の夫婦として生活し、その間事実上の夫の氏を通称として使用してきたなどの事情のもとでは氏を変更するやむを得ない事由があるとし、右子らが変更後の母の氏を称し母子同籍のままにしておくのが妥当であるとされた事例

昭和57年11月13日/宮崎家庭裁判所/審判/昭和57年(家)1166号

本妻のある内縁の夫の氏の呼称を29年余使用してきた内縁の妻が右呼称の氏に変更することの許可を申立てた場合に、申立人の呼称が社会生活上定着しており、また、これを共同生活を営む子らの氏の呼称に一致させることが望ましいものと認められるとした上で、氏は夫婦、親子など一定の身分関係にある者が共通に称する法律上の呼称であるとともに、名と組み合わされて個人の識別の機能を果たすものであり、もともと個人の呼称としての氏と身分上の氏とは別個のものと解されるから、申立人の呼称としての氏を内縁の夫と同一呼称の氏に変更しても、それは呼称の変更にすぎず内縁の夫と同一氏になるわけでもないし、民法の夫婦同氏の原則に反するものとも考えられないこと、内縁の夫と本妻とが永年にわたり事実上の離婚状態にあり、内縁の夫が既に死亡している以上申立人が本妻と同一呼称の氏を称したとしてもわが国の婚姻秩序に反することもないこと等を考慮し、氏を変更するにつきやむを得ない事由があるとして申立が認容された事例

昭和49年12月13日/那覇家庭裁判所/審判/昭和49年(家)269号

重婚的内縁関係にあつた妻が、夫の死亡後、亡夫の氏に変更することを申し立てた事件において、申立人は過去数年間亡夫の氏を通称として使用し、その氏が社会生活上定着してきていること、申立人と右亡夫との間の子は父が認知し父の氏を称しているため母である申立人と氏が異なり社会生活上種々の支障があること、夫は死亡しているので変更を認容しても正妻の呼称秩序を混乱させることはなく、また、正妻と内縁の妻が同一の氏を称しても、婚姻法秩序に反することもないこと等の諸事情を考慮し、申立が認容された事例

昭和47年12月12日/東京家庭裁判所/審判/昭和47年(家)8722号

認められなかった判例

非嫡出子の氏を父の氏に変更することは、父の正妻の強い反対があるため認めるべきでないが、母の氏を父の氏と同一呼称にすれば子の氏も呼称上は父の氏と同一になるとして、戸籍法107条1項により母の氏を父の氏と同一呼称の氏に変更することを許可した原審判に対し、子の氏の父の氏への変更は民法791条によりその許否を決定すべきものであり、父の重婚的内縁の妻である母の氏を前記の理由により変更することは戸籍法107条1項の法意に反し許されないとして、父の正妻からの即時抗告に基づき原審判を取消したうえ、母の氏の変更申立が却下された事例

昭和56年12月9日/大阪高等裁判所/決定/昭和56年(ラ)284号

重婚的内縁関係にある女性の氏を内縁の夫の氏と同一の氏に変更することは、配偶者の有する婚姻外の第三者に他方配偶者との婚姻を推定させる同一姓を名乗らせないとの法的利益を侵害するほか、外形上2個の婚姻関係を作出し、一夫一婦制の婚姻法秩序に反することになるから、永年使用を理由とする場合にも、婚姻中の他方配偶者の承諾あるいは重婚的内縁関係の解消など、特段の事情がないかぎり、容認すべきでない

昭和55年12月9日/大阪家庭裁判所/審判/昭和55年(家)2754号

氏の変更を許容すべき「やむを得ない事由」とは通姓に対する愛着や内縁関係の暴露を嫌うというような主観的事情を意味するのではなく、呼称秩序の不変性確保という国家的、社会的利益を犠牲にするに値するほどの高度の客観的必要性を意味すると解すべきである。
前婚の死亡解消後、復氏届をなさないまま前婚以前の旧姓を通姓として使用してきた亡内縁の夫とともに右通姓を使用してきた内縁の妻およびその間の子が、右通姓をもつて一般社会に認識されていたことはうかがえるが、それだけでは右通姓に変更することを許容すべき「やむを得ない事由」があるとはいえない。

昭和41年10月18日/札幌高等裁判所/決定/昭和41年(ラ)39号

女が、別居中の正妻のある男と内縁関係を結び、以来夫の姓を称しており、両人間の子も右姓で通し、本人も右姓であると信じており、いまさら右子に戸籍上の氏(母の氏)を称せしむるに忍びないとしても、戸籍上の氏を事実上の姓どおりに改めるに足りる「やむを得ない事由」に当るとは認められない。

昭和32年8月8日/大阪高等裁判所/民事第2部/決定/昭和32年(ラ)48号

改名許可後の手続き

無事に姓(氏)・名前の改名が許可された後は、 氏、名の変更届を本籍地または所在地の市区町村役所へ提出する必要があります。
忙しい方は郵送で提出することもできます。

氏の変更届(見本)

氏または名の変更届を提出することで戸籍謄本の名前、住民票の名前が変更されます。

役所への氏または名の変更届には期限がありませんが、役所によっては、審判がおりて届出までに2週間以上経過をしている場合は、その理由を求めるところもあります。

改名後の手続き一例

1.戸籍謄本、住民票の変更
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更

改名後の手続きについては「名前の変更許可後の手続きを徹底解説!改名した戸籍謄本の画像あり」でどこよりも詳細に記載しておりますのでご参考下さい。

まとめ

このように内縁関係にある妻、夫が相手の苗字に変更する際に注意する点は多々あります。
このような理由で、氏・名の変更を申し立てされようと考えられている方は是非、氏名変更相談センターにご相談ください。

 

氏名変更でお悩みの方は

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