この記事は、同性婚をされている方がパートナーの苗字へ変更するための方法を記載しております。

※次のような記事もございます。該当される方はご参考下さい。
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事実婚の妻、子供が夫の苗字に変更する方法は?
夫婦が別姓を名乗る方法は?
【完全版】名前の改名手続きの流れを丁寧に解説

同性婚とは?

「同性婚」または「同性結婚」とは、簡単に言うと「同性同士で結婚すること」を言います
男性と男性が結婚する場合や、女性と女性が結婚する場合などです。
アメリカやヨーロッパ、台湾などの様々な国で同性婚が法律上認められていますが、日本では同性婚は法律上認められておりません

同性婚を認めている国
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認定NPO法人虹色ダイバーシティHPより

法律婚との違いは?

夫婦別姓

「同性婚」「同性結婚」が「法律婚」と異なる点は多くありますが、次の点が大きな違いと言えます。

法律婚との違い

①パートナーに相続権がない
②子供が産まれた場合、子供を産んでいないパートナーは親権者になれない
③パートナー同士の苗字、戸籍は変わらない

①パートナーに相続権がない

「同性婚」や「同性結婚」の場合、日本では法律上の夫婦として扱われないため、パートナーが亡くなったとしても原則、相続をすることができません
パートナーに相続させるには、遺言書などで財産を遺贈する旨を記載する必要があります。

②子供を産んだ場合、子供を産んでいないパートナーは親権者になれない

「同性婚」で子供が産まれた場合、子供を産んでいないパートナーは「親権者」にはなりません。そのため「同性婚」の場合、子供を産んだ親の「単独親権」となります。もちろん、パートナー同士で子供のことを相談して決めていくことは問題ありませんが、法律上の親権があるのは、出産した親となります。

また「親権者」が亡くなった場合、親権者がいなくなってしまうので、親権者の代わりとなる「未成年後見人」というものを選任する必要があります
※詳しい未成年後見人の内容は「裁判所:未成年後見人選任」をご参考下さい。
親権者が生きている間に遺言書で「未成年後見人」を指定していれば原則、指定された方になる可能性は高いですが、指定をしていない場合に未成年後見人を選任する手続きをした場合、候補者を立てることはできますが、家庭裁判所が未成年者の生活状況や財産状況など総合的に判断して選任していきます。

③パートナー同士の苗字、戸籍は変わらない

「同性婚」のパートナーの苗字、戸籍は変更されません
また子供が生まれた場合、子供は出産した人の戸籍に入り出産した人と同じ苗字となります
実体的には結婚生活を送っていたとしても、戸籍では形式的に婚姻関係が判断できません。
ただし、戸籍や苗字を変更することはできませんが、パートナーシップ宣誓書受領証をもって、パートナーとの関係を証明することができます。

パートナーシップ宣誓受領書
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パートナーシップ宣誓書受領証(世田谷区より

このパートナーシップ宣誓は、役所で手続きを行うのですが、現状、パートナーシップ宣誓を対応している役所と対応していない役所がございます。

その他、外国人パートナーが結婚した際に取得できる配偶者ビザがもらえない、病院などで家族でないからという理由で病室に行けない、手術の同意ができない可能性などが法律婚との違いとなります。

同性婚のパートナーの苗字へ変更する方法

裁判

「同性婚」のパートナー、子供が苗字を変更するには次の方法があります。

苗字を変更する方法

①養子縁組をする
②家庭裁判所で「氏の変更申し立て」を行う

①養子縁組をする

養子縁組では、養親が養子より年齢が上でなければならないなどの条件がございます。
養子縁組の要件などについては、「養子縁組による苗字変更」をご参考下さい。

②家庭裁判所で「氏の変更申し立て」を行う

「家庭裁判所」が苗字を変更することを「許可」すれば、パートナーの苗字に変更することができます
またパートナーの子供も同様に、「家庭裁判所」の「許可」を得ることで、苗字を変更することが可能です。

それでは、家庭裁判所ではどのような手続きが必要で、どのような人は許可されるのでしょうか?

手続きはどこで行うの?

裁判所

それでは実際に苗字を変更する手続きは、どこで行うのでしょうか?

改名の申立をする家庭裁判所は、「住所地の家庭裁判所」になります。
ご自身が申し立てをする家庭裁判所がどこになるか「全国の家庭裁判所の管轄一覧」をご参考下さい。

費用・料金は?

お金

裁判=高い、というイメージですが、手続きの実費自体はそれほどしません。

改名にかかる実費

1.収入印紙800円
2.郵便切手200円~1500円ほど ※
3.(変更許可後)収入印紙150円

※申し立てをする裁判所によって郵便切手の金額は異なります。
提出する郵便切手の金額は「全国の家庭裁判所の郵便切手一覧」をご参考下さい。

改名が認められるためのポイントは?

ポイント

公開している同性婚の改名手続きの判例はございません。
そのため弊所が対応したお客様の案件をもとにポイントをまとめさせて頂きます。
あくまで弊所の考えるポイントとなりますので、その点予めご了承下さい

認められやすくなるポイント

通称名(パートナーの苗字)を長年名乗っている
・パートナーが法律婚などをしていない
・長期継続して夫婦として客観的に判断できる生活をしている
・パートナーシップ宣誓をしている

まず、大事なことは「パートナーの苗字(通称名)を長年名乗っている」必要があります
※通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。

個別の事情によって、必要となる年数は変わってきますが、「10年以上」名乗られていることが理想的です

認められにくくなるポイント

・本妻、本夫等がおり、苗字の変更に反対している
・通称名(パートナーの苗字)を名乗っている期間が短い

パートナーが法律婚をしており、本妻、本夫が苗字を変更することに反対している場合、改名は認められにくくなります。

また通称名(パートナーの苗字)を名乗っている期間が短いと変更は厳しくなります。

必要な書類は?

書類2

申立書

申立書記載例
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こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。
氏の変更の申立書、子の氏の変更申立書はこちらからダウンロードすることもできます。

申立書の1P目の内容は該当の内容を記入していけば問題ありませんが、2P目の申立理由については慎重に作成する必要があります。

戸籍謄本

申立人の戸籍謄本を提出する必要があります。
戸籍謄本については、発行から3か月以内のものを求められます。

姓(名字)の変更の理由を裏付ける資料

内縁関係にある人が、改名の申立てをする場合、どのような証拠資料が必要となってくるのでしょうか?

証拠資料

通称名の資料
パートナーの同意書
・パートナーシップ宣誓書受領証

通称名を使用していることが分かる資料

通称名については「通称名とは?」をご参考下さい。
パートナーの苗字に変更するにはパートナーの苗字を名乗っていることが分かる資料の提出が必要です。

具体的には、次のような資料がございます。
公共性が高いものを中心に、年代はまんべんなくご準備ください。

通称名の資料の例

・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・SNS(LINEやFacebookなど)
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録してしまうと発生します)

パートナーの同意書

パートナーが苗字を変更することに同意している場合、同意書を提出します。
必ず提出しないといけないものではないですが、提出をされることで裁判所としてはパートナーからの同意を得られていることが判断できます。

同意書の書式はどのようなものでも問題ありません。
こちらからダウンロードすることもできます。

過去の事例・判例は?

家庭裁判所

申し訳ございませんが、同性婚を理由とした公開されている過去の判例はございません。
今後、判例ができた場合、こちらに記載させて頂きます。

改名許可後の手続き

無事に姓(氏)・名前の改名が許可された後は、 氏、名の変更届を本籍地または所在地の市区町村役所へ提出する必要があります。
忙しい方は郵送で提出することもできます。

氏の変更届(見本)

氏の変更届を提出することで戸籍謄本の名前、住民票の名前が変更されます。

役所への氏または名の変更届には期限がありませんが、役所によっては、審判がおりて届出までに2週間以上経過をしている場合は、その理由を求めるところもあります。

改名後の手続き一例

1.戸籍謄本、住民票の変更
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更

改名後の手続きについては「名前の変更許可後の手続きを徹底解説!改名した戸籍謄本の画像あり」でどこよりも詳細に記載しておりますのでご参考下さい。

まとめ

多くの国では同性婚が認められており、日本にお住いの同性愛者の方は、思うような生活ができず、理不尽な扱いなどをされ、大変な思いをされているかもしれません。
弊所の記事が何かしらの役に立てば幸いです。

同性婚を理由に、氏の変更を申し立てされようと考えられている方は是非、氏名変更相談センターにご相談ください。

 

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