・外国人が日本人の子供を国際養子縁組するには?
・日本人の養子の苗字を外国人の養親の苗字に変更したい
・外国人が日本人を養子縁組したら戸籍はどうなるの?
外国籍の方が日本人を養子にすることはできるのでしょうか?
この記事では「外国人を養親とする国際養子縁組の手続き」や「養子縁組後、国籍や戸籍、苗字がどうなるのか?」を解説しております。
目次
国際養子縁組とは?
国際養子縁組とは「国籍の異なる養親と養子による養子縁組」のことを言います。
具体的な例として日本人が外国人の養子になる場合や、反対に外国人が日本人の養子になる場合などのことを言います。
国際養子縁組の手続き
どの国の法律が適用されるの?
日本人が外国人の養親や養子になる場合、日本と海外、どちらの法律が適用されるのでしょうか?
日本の法律には次のような記載があります。
この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
つまり日本人が養親となる場合は日本の法律が適用され、外国人が養親となる場合は外国人の国の法律が適用されます。国籍が異なる夫婦が養親となる場合、養父の国の法律、養母の国の法律がそれぞれ適用されます。
また養子の保護のために、養子の国の法律で、本人や実父母の承諾、裁判所などの許可等が必要となる場合、これらの要件も満たしていく必要があります。
そのため外国人が養親となり、日本人が養子になる場合、養子縁組の法律は外国の法律で進められ、養子を保護する内容(本人や実父母の承諾、裁判所などの許可など)については日本の法律で進められます。
具体的な手続きの例(養親:アメリカ人、養子:日本人の場合)
養親の法律で養子縁組を進めていくため、アメリカ人が養親となる場合、基本的な手続きはアメリカの法律で進めていきます。
まずアメリカで養子縁組をする場合、国家の要件と州の要件を満たしていく必要があります。
国際養子縁組についてアメリカ国家の要件は次のようなものがあります。
・養親がアメリカ国民である。
・未婚の場合は、25 歳以上である。
・結婚している場合、共同で子供を養子にする必要があり、配偶者も米国市民であるか、米国で法的地位を持っている必要がある。
・犯罪歴の有無など特定の要件を満たしているか。
ただし日本人を養子とするアメリカの養子縁組は、ほとんどが「特別養子縁組」であり、上記の要件から、さらに厳格になります。(例:養親となるものは夫婦でなければならない。など)
この要件に加えて州でも養子縁組について要件があれば、それを満たしていく必要があります。
これらの要件を満たしたうえで、米国市民権・移民局 (USCIS) に養子縁組に関する申請を行い、認められると今度は日本での児童相談所でのマッチング、日本の裁判所による特別養子縁組による手続き、米国での移民ビザの申請などを行っていきます。
外国人が日本人を養親縁組した場合
日本の準拠法で国際養子縁組の効果について、明確に規定している条文はありませんが、準拠法に「養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。」と記載あることから、養子縁組の効果も養親の本国法が適用されます。
そのため外国人が日本人を養子にする場合、養子縁組の法律は外国人の国の法律が適用されます。
国籍はどうなる?
国際養子縁組により養子が外国籍を取得することがあります。
この場合、日本人の養子は、自らの選択で国籍を取得したわけではないため、外国籍と日本国籍を保持した二重国籍となります。18歳以前に二重国籍となった場合には20歳になるまでに、18歳以降で二重国籍となった場合、二重国籍となってから2年以内に国籍を選択する必要があります。
二重国籍については「二重国籍とは?国籍選択の手続きや苗字の変更方法を解説」をご参考ください。
戸籍はどうなる?
外国人が養親となる特別養子縁組を行った場合、日本の実母の戸籍から子供の名前は削除され、養子を筆頭者とした新しい戸籍が編成されます。
実母の戸籍から養子は消除されますが、養子の国籍は日本国籍を保持したままとなります。
苗字はどうなる?
日本の養子縁組の場合、苗字は養親の苗字となりますが、外国人を養親とする養子縁組の場合、養子の戸籍上の苗字は変更されません。
養子の苗字を外国籍の養親の苗字に変更するには家庭裁判所の許可を得る必要があります。
日本人の苗字を変更するには?
日本国籍の人が外国籍の養親の苗字に名前を変更する場合や下の名前を変更するには、次の手続きが必要となります。
①家庭裁判所にて氏または名の変更許可を得る
②市役所に変更の届出を行う
②市役所への変更届出は提出すれば問題なく変更されますが、①家庭裁判所の手続きは、申立をしても必ず名前の変更が認められるというわけではありません。
家庭裁判所での改名手続きの流れ(費用・書類・期間など)について詳細に知りたい方は、こちらの記事もご参考下さい。
【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ!変更許可のポイントは?
家庭裁判所での手続き
どこで手続きするの?
原則:申立人の住所地を管轄する裁判所
例外:日本に住所がない場合
→ 日本での最後の住所地を管轄する裁判所
再例外:申立人が日本に一度も住所を置いていない場合
→ 東京家庭裁判所
名前の変更申立を行う家庭裁判所は、原則住所地の家庭裁判所になります。ただし日本に住所が無い方や日本国籍だが日本に住所をおいたことが無い方は上記の通りとなります。
管轄の家庭裁判所がどこにあるかを調べられる方は、「家庭裁判所管轄一覧」をご参考下さい。
手続きを行う人は?
家庭裁判所で氏・名前の変更申立ができるのは、次の方です。
・戸籍の筆頭者及び配偶者
・父又は母が外国人の方
・名前を変更される方
申立人が15歳未満のときは,親権者等の法定代理人が手続きをします。
親権者が外国人夫婦になる場合、外国人夫婦が手続きを進めていきます。
費用・料金は?
1.収入印紙800円
2.郵便切手200円~1500円ほど
※家庭裁判所での実費です。交通費、郵送費、戸籍謄本代などは除いております。苗字の変更の場合、加えて収入印紙150円が必要となります。
郵便切手の金額は裁判所によって異なります。
郵便切手の金額を調べられたい方は、「【全国版】改名手続きでの郵便切手金額一覧」をご参考下さい。使用しなかった切手は、手続き後返却されます。
変更の要件は?
苗字・名前の変更をするにあたって条文には次のような記載があります。
「氏の変更」 戸籍法第107条
やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
「名の変更」 戸籍法第107条の2
正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
つまり苗字・名の変更をするには、家庭裁判所からやむを得ない事由・正当な事由があると判断されなければなりません。
具体的にどのような支障を来しているか、裁判官に変更する必要性があると判断されるような内容を作る必要があります。
過去の判例を見ますと、外国人の養子となった方の苗字・名前の変更は比較的に認められやすい傾向にあります。
どのような理由であれば変更許可されるか、許可されないのかの判断基準として「改名理由を徹底解説!却下される理由、変更許可のポイントは?」もご参考下さい。
必要な書類は?
苗字・名前の変更申立時に家庭裁判所へ必要となる書類は次の通りです。
①申立書
こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。
申立書の1P目については、記載例に沿って記載して頂ければ作成できますが、2P目の申立理由については慎重に作成する必要があります。
②戸籍謄本
戸籍謄本については、発行から3か月以内のものを求められます。
また、本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
③名の変更理由を裏付ける資料
改名を必要とする資料などがある場合は、そのような資料を提出します。具体的には次のような資料があります。
外国人の親、養親と同じ名前に変更する場合
この場合、外国人の親、養親の名前が分かるようなパスポートや郵便物なども一緒に提出をします。
また養子縁組したことが分かる資料やその翻訳資料なども提出します。
通称名を使用されている場合
※通称名がご不明な方は「通称名について」をご参考下さい。
この場合の変更の理由を裏付ける資料としては、昔から今現在まで通称名を使用していたことが分かる書類のコピーを提出します。
・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・SNS(LINEやFacebookなど)
・契約書(契約相手には通称名であることを伝えておきましょう)
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・(国民)健康保険証
友人・知人・会社関係・公共性の高いものを中心に、年代はまんべんなくご準備ください。
過去の判例
古い判例にはなりますが、外国人の養子となった方の改名に関する過去の判例を掲載します。
許可の判例
日本在住の外国人の養子となり養親の氏への氏の変更を許可された日本人未成年者につき、名の変更は子の人格権に関する問題として子の本国法によるとして、戸籍法107条2項を適用して、名の変更を許可した事例
昭和45年8月17日/東京家庭裁判所/審判/昭和45年(家)7877号
外国人(アメリカ合衆国ペンシルヴアニア州人)からの名の変更申立につき、日本法を適用し、出生後8年以上にわたり洗礼名を慣用しており、本名をまつたく使用していなかつたことからして、「正当な事由」があるとして、認容審判がなされた事例。
昭和44年12月1日/名古屋家庭裁判所/審判/昭和44年(家)261号
養親子間の法律関係の準拠法としての養父の本国法たるアイダホ州法で認められている養子の氏を養親のそれに変更することの許可は、わが国の裁判所にはかかる権限は与えられていないが、わが国で認められている類似の制度である子の氏変更許可の権限によつて、アイダホ州法上の氏の変更を適用実現できる。
昭和41年7月9日/東京家庭裁判所/審判/昭和41年(家)5965号/昭和41年(家)7022号
却下された場合
万が一申し立てが却下されてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
方法としては次の方法があります。
・却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
・通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
詳細な内容については、こちらの記事をご覧ください。
改名を取下げるべき?却下された場合は?
改名許可後の手続き
無事に改名することができた後はどういった手続きをする必要があるのでしょうか?
一般的には次のような手続きをする必要があります。
1.戸籍謄本、住民票の変更
※住所が日本にない方は、改名許可後の戸籍の変更届を本籍地の役所へ提出することになります。
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更
改名許可後の手続きについては、こちらで詳細に記載しておりますので、ご参考下さい。
改名許可後の手続きについて
まとめ
外国人を養親とする国際養子縁組の手続きと改名手続きを解説させて頂きました。
養子縁組をした養子の苗字・名前が変更できるかなどのご相談は、弊所にご相談頂ければ、初回無料でお伝えしますので、お気軽にご相談下さい。