2025年5月26日から、台湾の法を本国法とする方について、日本の戸籍に「台湾」と記載できるようになりました。

すでに戸籍へ「中国」と記載されている場合も、「台湾」への更正を申し出ることができます。ただし、過去の記載が自動的に書き換えられるわけではありません。本籍地の市区町村へ申出をする必要があります。

この記事では、戸籍法施行規則の改正内容を踏まえ、「中国」から「台湾」へ表記を変更できるケース、手続きの流れ、必要書類や注意点を解説します。

この記事のポイント

  • 2025年5月26日以降、戸籍に「台湾」と記載できる
  • すでにある「中国」の記載は、自動では変更されない
  • 変更方法は、原則として本籍地の市区町村への「更正の申出」
  • 通常は家庭裁判所の許可を必要としない
  • 申出人や添付書類は、変更する戸籍事項によって異なる

※本記事は2026年8月20日時点の法令・公表資料に基づいています。

戸籍に「台湾」と記載できるようになった

戸籍の台湾表記に関する法改正のイメージ

2025年5月26日、改正された戸籍法施行規則が施行されました。

新設された戸籍法施行規則第36条の2では、戸籍や届書に国籍を記載する場面で、一定の地域の法を本国法とする方については、国籍に代えてその地域を記載する仕組みが設けられています。対象として、台湾とパレスチナが定められました。

これにより、台湾の法を本国法とする方については、婚姻届などの戸籍届書や戸籍の「国籍・地域」に「台湾」と記載できます。

法務省は、施行前から戸籍に「中国」と記載されていた場合も、申出によって「台湾」へ更正できると説明しています。

正確には「国籍の変更」ではなく「国籍・地域の表記の更正」

「中国から台湾へ国籍を変更する手続」と表現されることがありますが、正確には、本人の国籍を取得・離脱する手続ではありません。

今回の改正で変わったのは、日本の戸籍における「国籍・地域」の記載方法です。日本国籍や台湾側の身分関係が、この申出によって変わるわけではありません。

また、戸籍法施行規則第36条の2は、国籍に代えて記載できる「地域」の一つとして台湾を掲げています。そのため、記事や申出書では「台湾国籍へ変更する」よりも、「戸籍の国籍・地域を『台湾』へ更正する」と表現する方が制度に即しています。

「中国」から「台湾」へ変更できる主なケース

変わる

対象になるのは、単に台湾で生まれた方に限られません。戸籍に記載された外国人について、台湾の法を本国法とすることが前提です。

具体的には、次のようなケースが考えられます。

台湾の方と国際結婚している場合

日本人と外国人が結婚しても、外国人配偶者が日本人の戸籍に入るわけではありません。日本人配偶者の身分事項欄に、婚姻日、外国人配偶者の氏名、生年月日、国籍などが記載されます。

台湾の方と婚姻した日本人の戸籍に、外国人配偶者の国籍として「中国」と記載されている場合は、「台湾」への更正を申し出ることができます。

2025年5月26日以降に婚姻届を提出する場合は、最初から「台湾」と記載することが可能です。

国際結婚後の戸籍の基本的な見方は、「国際結婚後の苗字の変更手続きを丁寧に解説」もご参考ください。

台湾から日本へ帰化した場合

帰化によって新しく作られた戸籍には、「帰化の際の国籍」や従前の氏名などが記載されます。

台湾から帰化した方の戸籍に、帰化前の国籍・地域が「中国」と記載されている場合も、「台湾」への更正を申し出られる場合があります。

帰化後は有効な台湾旅券を所持していないこともあるため、帰化当時に台湾の法を本国法としていたことを確認できる資料が必要になることがあります。帰化時に提出した資料だけで確認できるのか、台湾の戸籍謄本などを改めて用意する必要があるのかは、本籍地の市区町村へ事前に確認しましょう。

外国人の父母や子に関する記載がある場合

日本人の戸籍には、外国人配偶者だけでなく、外国人である父母や子などの国籍が身分事項として記載されることがあります。

このような記載についても、「中国」と記載された人物が台湾の法を本国法とする方であれば、更正の対象となる可能性があります。

ただし、同じ外国人に関する記載でも、配偶者、父母、子などの立場や、記載されている戸籍事項によって申出人が異なります。誰が申出人になるかを先に確認することが大切です。

出生地や死亡地の「中国台湾省」という記載

改正前の戸籍では、台湾にある出生地や死亡地が「中国台湾省台北市」などと記載されていることがあります。

法務省は、パブリックコメントへの回答で、施行後は「台湾台北市」などと記載し、既存の記載を直す場合は更正の申出によると説明しています。

国籍・地域だけでなく、出生地や死亡地の表記も変更したい場合は、申出の対象となる戸籍事項を漏れなく市区町村へ伝えましょう。

戸籍を「中国」から「台湾」へ変更する手続き

更正の申出に向けて用意する書類とペンのイメージ

一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 現在の戸籍で変更したい箇所を確認する
  2. 本籍地の市区町村へ事前に問い合わせる
  3. 申出書と必要書類を準備する
  4. 更正の申出をする
  5. 更正後の戸籍を取得して確認する

順番に見ていきます。

1.現在の戸籍で変更したい箇所を確認する

まず、現在の戸籍全部事項証明書などを取得し、どの欄に「中国」と記載されているのかを確認します。

確認する主な項目は、次のとおりです。

  • 婚姻事項にある配偶者の国籍
  • 帰化事項にある帰化の際の国籍
  • 父母や子などの国籍に関する事項
  • 本人や親族の出生地・死亡地

問い合わせの際は、「戸籍の国籍を変えたい」とだけ伝えるより、具体的な身分事項と記載内容を伝えた方が、申出人や必要書類を確認しやすくなります。

2.本籍地の市区町村へ事前に問い合わせる

相談先は、変更したい戸籍を管理している本籍地の市区町村の戸籍担当窓口です。住所地と本籍地が異なる場合は、住所地ではなく本籍地の市区町村へ確認します。

戸籍証明書の広域交付が利用できることと、戸籍の記載を更正する申出先は同じではありません。本籍地以外の役所で戸籍を取得できたとしても、そこで更正手続までできるとは限らないため注意してください。

問い合わせるときは、次のように伝えると内容が伝わりやすいでしょう。

戸籍の身分事項に記載された「中国」を「台湾」へ更正したいと考えています。
必要書類、郵送の可否を教えてください。

3.申出書と必要書類を準備する

全国一律に公開された専用様式があるわけではなく、市区町村が用意する申出書を使用することがあります。事前に用紙の入手方法を確認しましょう。

必要書類として考えられるものは、次のとおりです。

  • 更正の申出書
  • 申出人の本人確認書類
  • 台湾の旅券の原本または写し
  • 旅券など外国語で作成された書類の日本語訳
  • 台湾の戸籍謄本、国民身分証、在留カードなど、台湾の法を本国法とすることを確認できる資料
  • 現在の戸籍全部事項証明書
  • 代理人が提出する場合の委任状

上記のすべてが必ず必要になるわけではありません。

たとえば、台湾の方と婚姻しているケースでは、台湾旅券とその日本語訳が案内されることがあります。一方、帰化した方の帰化前の国籍・地域を更正する場合や、有効な台湾旅券がない場合は、台湾の戸籍謄本など別の資料を求められる可能性があります。

必要書類は戸籍の内容によって異なるため、書類を取り寄せる前に本籍地の市区町村へ確認するのが確実です。

4.更正の申出をする

必要書類がそろったら、本籍地の市区町村へ申出書を提出します。

窓口への持参のほか、郵送による申出が可能な場合も考えられますが、受付方法は市区町村へ確認してください。海外に住んでいる場合も、在外公館で受け付けてもらえるか確認し、厳しければ本籍地の市区町村へ提出方法を確認しましょう。

更正の申出自体に、家庭裁判所へ納める収入印紙は必要ありません。通常、申出手数料もかかりませんが、戸籍証明書の取得費用、郵送料、外国書類の取得費用などは別途必要です。

5.更正後の戸籍を取得して確認する

処理が終わったら、戸籍全部事項証明書などを取得し、希望した項目が「台湾」へ更正されているか確認します。

処理期間は全国一律ではありません。法務局への確認が必要となる事案や、市区町村で初めて扱う事案では、通常より時間がかかることもあります。提出時に、処理の見込みと完了連絡の有無を確認しておくと安心です。

更正申出書の記載例

申立書

市区町村の様式や戸籍の記載内容によって表現は異なりますが、台湾の方と婚姻している場合は、次のような内容が考えられます。

申出する事項
申出人の身分事項欄中、婚姻事項に記録された配偶者○○○○の国籍「中国」を、国籍・地域「台湾」に更正されたい。

申出の理由
配偶者○○○○は台湾の法を本国法とする者であるため、令和7年法務省令第9号による戸籍法施行規則の改正及びこれに伴う取扱いに基づき、上記の更正を申し出ます。

帰化した方の場合は、対象部分を「帰化事項中、帰化の際の国籍『中国』を、国籍・地域『台湾』に更正されたい」などと記載することが考えられます。

これは一般的な記載例です。実際には、市区町村から案内された用語と様式に合わせてください。

「中国」から「台湾」へ変更するときの注意点

戸籍の台湾表記への更正で確認したい注意点のイメージ

既存の戸籍は自動的に変更されない

2025年5月26日を過ぎても、すでに記載されている「中国」が自動的に「台湾」へ変更されるわけではありません。

法務省は、既存の記載についても「台湾」へ更正できると説明し、その具体的な取扱いは更正の申出によるとしています。したがって、変更を希望する場合は自ら申出をする必要があります。

申出人は変更する戸籍事項によって異なる

台湾の方の国籍・地域を変更したい場合でも、その方が必ず申出人になるとは限りません。

外国人配偶者は日本人の戸籍の構成員ではないため、婚姻事項に記載された配偶者の国籍・地域を更正するケースでは、戸籍に記載されている日本人配偶者が申出人となることがあります。帰化事項の更正であれば、帰化した本人が申出人になることが考えられます。

法務省のパブリックコメント回答では、申出人や必要書類などの具体的な取扱いは通達で示すとされています。申出書へ署名する方を決める前に、本籍地の市区町村へ確認してください。

一つの申出ですべての戸籍が変わるとは限らない

同じ台湾の方に関する記載が、配偶者、子、父母など複数人の戸籍に存在することがあります。また、婚姻後の転籍や分籍などにより、記載が複数の戸籍にまたがっている場合もあります。

一つの戸籍を更正しても、別の戸籍や除籍にある関連記載まで当然に変更されるとは限りません。どの戸籍の、どの事項を更正したいのかを整理して相談しましょう。

更正前の「中国」という記載が履歴として残ることがある

戸籍の更正は、過去の記録を単純に消去する手続ではありません。更正前後の内容が履歴として記録され、取得する戸籍証明書に更正前の「中国」という記載も表示されることがあります。

なお、この更正前の「中国」という記載は転籍等により、新たな戸籍を編製すれば、新しい戸籍には記載されません。

在留カードや住民票が同時に変わる手続ではない

この申出は、日本の戸籍の記載を更正する手続です。在留カード、住民票、旅券、台湾側の戸籍などを一括して変更する手続ではありません。

もっとも、在留カードや住民票では、以前から国籍・地域として「台湾」と記載されていることがあります。手続前に各書類を見比べ、どの公的書類の表記を変更したいのか整理しておきましょう。

戸籍の台湾表記に関するよくある質問

疑問 クエスチョン はてな

家庭裁判所の許可は必要ですか?

通常は必要ありません。本籍地の市区町村への更正の申出によって処理されます。

ただし、台湾表記への更正と併せて、外国人配偶者の氏名を訂正する場合など、戸籍の訂正に家庭裁判所の許可が必要になることがあります。

戸籍上の外国人配偶者の氏名を変更・訂正したい場合は、「戸籍上の外国人配偶者のカタカナ氏名を変更・訂正するには?」をご参考ください。

台湾の方であれば、必ず変更できますか?

戸籍法施行規則第36条の2は、台湾の法を本国法とする方を対象としています。台湾生まれという事情だけで一律に判断されるものではありません。旅券や台湾の戸籍などにより、対象者であることを確認できる必要があります。

変更しなければ罰則はありますか?

既存の「中国」という記載を「台湾」へ変更するかどうかは、本人や関係者の希望によります。変更しないことによる罰則はありません。

申出の期限はありますか?

法務省が公表している省令や会見資料では、この更正の申出について一律の期限は示されていません。個別の取扱いを確認したうえで、必要な旅券や戸籍資料を用意しやすいうちに手続を進めるとよいでしょう。

台湾に住んでいても手続できますか?

海外在住でも申出を検討できますが、申出人、郵送の可否、在外公館での受付の可否、原本確認の方法は個別に確認が必要です。まずは本籍地の市区町村の戸籍担当窓口へ問い合わせてください。

まとめ

2025年5月26日から、台湾の法を本国法とする方について、戸籍の国籍・地域に「台湾」と記載できるようになりました。

すでに「中国」と記載されている場合も、「台湾」への更正を申し出ることができます。ただし、自動的に変更されるわけではありません。本籍地の市区町村へ、変更したい戸籍事項を具体的に伝え、申出人と必要書類を確認する必要があります。

今回の手続は、国籍そのものや氏名を変更するものではなく、通常は家庭裁判所の許可も必要ありません。一方、外国人配偶者の氏名の訂正や、日本人配偶者の苗字変更も併せて希望する場合は、家庭裁判所の手続が必要になることがあります。国際結婚に伴う氏名変更や戸籍訂正でお困りの方は、氏名変更相談センターへご相談ください。