結婚後、旧姓で知れ渡っている所では引き続き旧姓を使用できたほうが楽な場合があります。
それでは、戸籍上の名前が変わっても旧姓を使用できる範囲にはどういったものがあるのでしょうか?
この記事では「法律上、旧姓を使用できる範囲」について解説します。
※次のような記事もあります。ご参考下さい。
「本人確認書類に旧姓併記した場合のメリット・デメリットは?」
「【見本付き】旧姓併記できる書類一覧」
「旧姓併記の手続きで必要な旧姓の記載がある戸籍謄本とは?」
「旧姓に戻す際の費用と期間は?」
目次
旧姓を使用できる範囲は?
職場
旧姓使用を考える一番の場所が職場だと思います。
まず、賃金台帳、源泉徴収票、社会保険証など公的書類は戸籍名でないといけません。
※保険証については旧姓を併記することはできます。旧姓併記の方法は「旧姓併記できる本人確認書類は?」をご参考下さい。
一方で公的な書類でない、座席表、名刺、名札、社員証、メールアドレス、社員名簿、出勤簿、給与明細などは会社で旧姓の使用が認められている場合、旧姓を使用することができます。
法律上、旧姓使用は認められていないの?
「会社が旧姓使用を認めなければならない」という法律も無ければ、「旧姓使用は違法である」とする法律もありません。そのため旧姓を名乗ること自体は違法ではありませんが、会社で旧姓を使用できるかどうかは会社の判断となります。
旧姓を認めている会社の割合は?
内閣府が調べた調査によると、「何らかの形で旧姓使用を認めている」企業は全体の49.2%で、「これまでに旧姓使用を検討したことはなく、旧姓使用も認めていない」企業は全体の30.6%となっています。
ただし1000 人以上の企業では「何らかの形で旧姓使用を認めている」企業は74.6%と会社の規模が大きくなるにつれて認められやすい傾向になっています。
詳しい内容は、内閣府HP「旧姓使用の現状と課題に関する調査報告書」をご参考下さい。
職場で旧姓を使用する理由は?
上記の図は旧姓を使用する理由で当てはまるものを複数答えてもらった調査の結果です。
理由としては、「改姓前から付き合いのある仕事関係者に同一人物と認識してもらえるため」が 72.5%と最も高く、その次が「取引先・顧客等社外の人に姓が変わったことを伝えなくてよいため」は37.8%、「名刺やメールアドレスを変更したくなかったため」は36.0%となりました。
詳しい内容は、内閣府HP「旧姓使用の現状と課題に関する調査報告書」をご参考下さい。
どんな書類を旧姓使用しているの?
上記の図は職場で旧姓を使用している人が、どのような範囲で旧姓を使用しているかを複数答えてもらった調査の結果です。
最も多いのが「名札、社員証」で81.5%、続けて「座席表」75.3%、「社内名簿」71.3%、「名刺」70.5%、「メールアドレス」69.1%となっていました。
詳しい内容は、内閣府HP「旧姓使用の現状と課題に関する調査報告書」をご参考下さい。
履歴書を旧姓で記載できるの?
過去の判例では次のような判例がございます。
虚偽の氏名等を記載した履歴書及び雇用契約書等を作成行使した行為は、たとえ自己の顔写真が貼り付けられ、あるいは各文書から生ずる責任を免れようとする意思を有していなかったとしても、有印私文書偽造、同行使罪に当たる。
平成11年12月20日/最高裁判所第一小法廷/決定/平成9年(あ)1227号
こちらの判例は戸籍と異なる名前で履歴書等を使用した場合に下された判例です。
旧姓を使用した履歴書が全て有印私文書偽造罪などにあたるとは言い切れませんが、そのようなリスクがあることだけは理解しておいた方が良いかと思います。
資格証明書は旧姓を使用できるの?
医師や宅地建物取引士など一部の資格証明書は旧姓の併記が認められている場合がございます。また旧姓併記が認められないとしても、弁護士など旧姓のまま仕事ができる職業は多く存在します。
また裁判所でも裁判官が判決に旧姓を使用すること認めています。
資格をお持ちの方は御自身の資格が旧姓併記できるかどうか一度調べてみてもいいかもしれません。
友人
友人間でも旧姓を使用することができます。戸籍上の名前と異なる名前を名乗ること自体は違法ではありません。
戸籍法は、各自が戸籍上の氏名以外の関係でこれと異なる氏名を呼称することを別段禁止してはいないのである。
昭和58年10月13日/最高裁判所第一小法廷/決定/昭和57年(ク)272号
その名前を利用して相手の財産を騙し取るなど、使用方法によっては次のような罪に問われる可能性があります。
・詐欺罪
・私文書偽造罪
・公正証書原本不実記載等の罪 など
銀行
通帳口座については、引き続き旧姓にて使用できる会社はあります。ただし上の図のように旧姓が使用できる銀行とそうでない銀行があるため、実際にご利用できるかどうかは利用している銀行に確認下さい。
まとめ
旧姓を使用できる範囲について簡単にまとめさせて頂きました。
基本的に戸籍上の名前と異なる名前を名乗ること自体は違法ではありません。その名前の使用方法によって違法になるかどうかが決まってきます。トラブルを防ぐためにも基本的に事情を伝えられる場所では旧姓である事を伝えたうえで旧姓使用されるのが良いと思います。
この記事が旧姓の使用に悩まられている方の参考になれば幸いです。