戸籍上の苗字・名前を変更するには、家庭裁判所で「氏または名の変更許可申立」が必要となります。
ただし家庭裁判所で苗字、名前の変更許可を得たとしても自動的に戸籍名が変更されるわけではありません。
役所で苗字、名前の変更の手続きが必要となります。
それでは、名前の変更手続きにはどのようなものがあるのでしょうか?
この記事では「代表的な変更手続き一覧と改名後の戸籍謄本の記載」などを解説しております。
ネットでの契約や各資格の変更手続きなど個々人で必要な手続きは異なります。そのような内容は直接担当部署へご連絡下さい。
また手続きでは改名許可の審判書の写しを提出することがありますので、審判書のコピーは多めに保管しておきましょう。
※次のような記事もあります。ご参考下さい。
「苗字・名前の改名手続きの流れを丁寧に解説」
「戸籍とは?戸籍謄本の見本で記載内容を解説」
目次
早めにした方がいい手続き
戸籍謄本、住民票の変更
手続きの場所
…本籍地または所在地(一時滞在地を含む)の市区町村役所
手続きの期限
…特になし
手続きにかかる期間
…即日~1週間前後
手続きに必要なもの
…審判書
※苗字を変更する場合は、確定証明書も必要となります。
※令和6年3月1日より戸籍謄本の添付は不要となりました。
※令和3年9月1日より押印は任意となりました。
費用・料金
…無料
注意点
…名前変更の届出をした際は、一緒に「マイナンバーの手続き」「保険証の手続き」「印鑑証明書の手続き」もしておきましょう。
家庭裁判所から氏名変更の審判書が発行されて一番最初に行う手続きは、氏または名の変更届を本籍地または所在地の市区町村役所へ届け出をすることです。
氏、名の変更届はこちらからダウンロードできますし、役所でもらうこともできます。
氏または名の変更届を提出することで戸籍謄本の名前、住民票の名前が変更されます。
手続きの期限
よく改名の許可を頂いた方から、いつまでに市町村町役所に届け出をしないといけないですかという質問を頂きます。
特に提出期限はございませんが、一定期間(2週間ほど)遅れた場合は、その理由を市役所へ伝えなければならない場合がございます。この理由によって受け付けられなくなるというわけではございません。
転籍等により審判書の本籍地と記載が異なるようになった場合でも、手続きは可能です。
手続きの期間
苗字・名前の変更届を提出した場合、当日のうちに変更後の戸籍謄本を発行できる場合もありますし、手続きに1週間前後かかる場合もございます。
手続きに必要なもの
役所への届出の際には一般的に次の書類が必要となります。
・審判書
・認印(シャチハタでない)
※確定証明書(苗字を変更する場合)
※令和6年3月1日より戸籍謄本の添付は不要となりました。
確定証明書は、審判を受け取った日から14日を経過しないと裁判所は発行しませんので、確定証明の申請書を提出された方は、その日数が経過するまで待ちましょう。
確定証明書については「確定証明書とは?いつ届くの?見本・書式付きで手続きを解説」もご参考下さい。
注意点
名の変更届をされる際に一緒に、「マイナンバー」・「国民健康保険」・「印鑑登録の変更」手続きをしておきましょう。
個人番号カード・マイナンバーカードの変更
個人番号・マイナンバーカードの名前変更の手続きでは、住所地の役所で名前変更の届出をした当日に手続きができるので、名前変更の届出をした日に一緒に届け出をしておきましょう。個人番号・マイナンバーカードの名前変更の手続きをすると、カード表面のサインパネル欄に新しい氏名が記載されます。
手続きに必要なもの
個人番号・マイナンバーカードの氏名変更は、本人以外でも手続きは可能です。その際には、下記の書類が必要となります。
【同一世帯の方が手続きをする場合 】
・マイナンバーカード
・届出人の本人確認書類 ※
【その他代理人が手続きをする場合 】
・マイナンバーカード
・届出人の本人確認書類 ※
・代理権の確認できる書類
※本人確認書類
・写真付きのもの
「運転免許証、住民基本台帳カード、個人番号カード(マイナンバーカード)、在留カード、特別永住者証明書、旅券、船員手帳、海技免状、小型船舶操縦免許証、猟銃・空気銃所持許可証、戦傷病者手帳、宅地建物取引主任者証、電気工事士免状、無線従事者免許証、認定電気工事従事者認定証、特種電気工事資格者認定証、耐空検査員の証、航空従事者技能証明書、運航管理者技能検定合格証明書、動力車操縦者運転免許証、教習資格認定証、警備業法第23条第4項に規定する合格証明書、身体障害者手帳、療育手帳、国または地方公共団体の機関がその職員へ発行した身分証明書(本人写真のあるもの)」
・写真が付いていないもの
「国民健康保険証被保険者証、国民健康保険高齢受給者証、後期高齢者医療被保険者証、健康保険被保険者証、共済組合証、船員保険被保険者証、介護保険被保険者証、国民年金手帳、国民年金証書、老齢福祉年金証書、厚生年金証書、船員保険年金証書、恩給証書、共済年金証書、被爆者健康手帳、雇用保険被保険者証、雇用保険受給資格者証、労働者災害補償証書、官公署が発行した医療受給者証(乳幼児医療受給者証等)、法令に根拠がある資格,免許等(調理師,薬剤師等)、住民基本台帳カード(本人写真のないもの)」
注意点
マイナンバーの名前変更の届出をする場合、暗証番号の照合が必要となることがあります。
事前に確認をしておきましょう。
また、マイナンバーの改名手続きをする際には「国民健康保険」・「印鑑登録の変更」手続きも一緒にしておきましょう。
(国民)健康保険、年金の氏名変更
手続きが必要な方
改名をした場合、保険証について届け出が必要になるのは、国民健康保険の方で、健康保険の方は届出等は不要です。
また年金関係については国民健康保険、健康保険どちらの方も届出は不要です。
マイナンバー制度の導入により、平成30年3月から日本年金機構への被保険者の氏名変更届・住所変更届の提出が原則不要となりました。協会けんぽでは日本年金機構から提供を受けた変更情報をもとに氏名変更された新しい保険証の発行を行います。つまり国民健康保険でなく健康保険の方は名前の変更の手続きをする必要がありません。新しい健康保険証は事業主に発行されます。
お名前を変更された方は、事業主から新しい健康保険証の交付と引き換えに旧保険証をお渡し下さい。事業主が日本年金機構まで旧保険証を送付してくれます。
ただしマイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者は、届出が必要です。
マイナンバーと基礎年金番号との結びつきの確認は、「ねんきんネット」やお近くの年金事務所でご確認下さい。
マイナンバーが結びついていない健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険に加入中の方については、事業主に申し出てください。事業主に「被保険者氏名変更届」を届け出て頂きます。
・国民年金第1号被保険者の方については、役所に変更届を提出してください。
注意点
「マイナンバー」・「印鑑登録の変更」の手続きも住所地の役所で行いますので、国民健康保険の改名手続きをする際には一緒に変更しておきましょう。
運転免許証の変更方法
手続きの場所
…警察署、運転免許証センター、運転免許試験場
手続きの期限
…無し
手続きにかかる期間
…即日(再発行の場合は、1~3週間)
手続きに必要なもの
…運転免許証、本籍記載の住民票、認印
費用・料金
…無料(再発行する場合は3500円)
氏名を変更した場合、運転免許証の記載も変更する必要がございます。
運転免許証は他の氏名変更の手続きの際に本人確認資料として使えますので、市役所での手続きの次にすれば、後の手続きがスムーズにできます。
手続きの場所
運転免許証の改名手続きは、管轄などなくお近くの警察署、運転免許証センター、運転免許試験場で対応して頂けます。
手続きにかかる期間・費用・料金
運転免許証の改名手続きは、次の2通りです。
①運転免許証の裏面に名前変更の記載をしてもらう。
②名前変更した運転免許証を再発行してもらう。
名前を変更した運転免許証を再発行する場合、改名前の名前は記載されない警察署などをもらえますが、再発行するまでに日数が1~3週間かかり、また再発行の手数料3500円が必要となります。
運転免許証センター、運転免許試験場で再発行の手続きをすれば、手数料はかかりますが、運転免許証を即日発行して頂けます。
また、警察署は土曜日、日曜日、祝日、休日、年末年始は受け付けていないケースが多いので、平日での対応が厳しい方は運転免許証センター、運転免許試験場がおすすめです。
手続きに必要なもの
必要な書類についてですが、住民票は本籍記載の住民票が必要です。住民票のコピーで対応してくれる地域もありますが、念のため原本、コピーどちらも持参し、コピーでよければ、コピーを提出しましょう。
認印についてはシャチハタでない印鑑をご持参下さい。
パスポートの変更届出
手続きの場所
…住民票上住所のパスポートセンター
…居所のパスポートセンター
…海外の日本国大使館、領事館
手続きの期限
…特になし
手続きにかかる期間
…都道府県パスポートセンター:6営業日
…市区町村パスポートセンター:10~14営業日
手続きに必要なもの
…写真(6か月以内)、戸籍謄本(6か月以内)、有効中のパスポート
※海外の大使館等の場合…滞在資格が確認できる書類など
費用・料金
…記載事項変更申請:6,000円
…新規申請、切替申請:16,000円(10年)11,000円(5年)
注意点
…パスポートの改名の申請は代理人でもできますが、パスポートの受け取りについては本人に限られています。
海外在住の方ができる限り来日しないで手続きを行う方法
海外在住でパスポートを変更する場合、日本国大使館、領事館で手続きをすることができるため、変更のために日本に帰国する必要はございません。
また海外在住の人がパスポートを改名するまでに必要となる日本の手続きは次の通りです。
①戸籍謄本、住民票等の取得
※日本に在住していない方は、日本に住所があったことを証明する書類も必要になります。
②家庭裁判所への申立
③家庭裁判所での面談
④家庭裁判所からの書類の受け取り
※氏・名の変更届、パスポートの変更届、パスポートの受け取りは海外の日本国大使館、領事館ですることが可能です。
海外在住の方が日本に来て手続きをするのは、かなりの負担となります。
弊所にご依頼頂けた場合、日本でお客様にして頂く内容を次のようにすることができます。
①家庭裁判所での面談
※①の面談も海外在住の方は多くの場合、省略することが可能です。
海外在住の日本人の方で、改名の労力を減らされたい方は、氏名変更相談センターをご活用ください。
落ち着いたときにする手続き
改名後の手続きは全て急ぎでしなくても問題ありません。
次にあげるのは、落ち着いたとき、必要な時にすればいい手続きの一覧です。
車検証の変更
手続きの場所
…管轄の運輸局(運輸局一覧)
手続きの期限
…名前変更してから15日以内
手続きにかかる期間
…即日
手続きに必要なもの
…戸籍謄本(3か月以内)、車検証、認印、委任状(お店に依頼する場合)
費用・料金
…変更登録手数料350円
…ナンバープレート代1500円前後(希望のナンバーの場合5000円前後)
車検証の氏名変更の手続きはそこまで難しいものではありませんが、運輸局の営業時間が平日のみのため、お忙しい方や平日にお休みがとれない方は行政書士など業者の方に委任するのも一つの方法です。
印鑑登録証明書の変更
手続きが必要な方
…実印に記載されている名前を変更された方
手続きの場所
…住民票上住所の市区町村役所
手続きの期限
…特になし
手続きにかかる期間
…本人が手続きした場合:即日
…本人以外が手続きをした場合:2~6日
手続きに必要なもの
…登録する印鑑、本人確認書類
費用・料金
…登録:基本無料(各役所で異なるためご確認ください)
…印鑑証明書発行:300円前後(各役所で異なるためご確認ください)
注意点
…姓(氏)を変更し、市町村町役所に届け出をした場合に、登録している印鑑と住民票の姓(氏)が異なる場合、印鑑登録は自動的に失効します。
役所にて登録されている印鑑を変更する際に、「マイナンバー」「国民健康保険」の手続きが完了されていない方は、印鑑を変更する際に一緒に変更しておきましょう。
登録する印鑑は住民票の氏名の文字と一致している必要があります。
このため改名により、姓(氏)が変わった際に、登録している印鑑と住民票の姓(氏)が異なる場合は、印鑑登録は自動的に失効します。
登録印が名のみの場合は、引き続き使用できます。
失効した方が印鑑登録証明書を必要とされる場合は、新しい印鑑で改めて印鑑登録申請をしてください。
銀行等預金の口座変更
手続きの場所
…取引店又は最寄りの支店
手続きの期限
…無し
手続きに必要なもの
…通帳、キャッシュカード、お届印、本人確認書類(新氏名が記載)、マイナンバーの確認できる書類
※本人確認書類についてはこちらをご参照ください。
銀行等の預金の口座名を変更する場合、銀行によっては、お取引店でなくとも最寄りの支店でも対応できます。
銀行の口座を変える際、お届印も帰られる場合は、今現在のお届印と新しいお届け印をお持ち下さい。
また振込先、引き落とし先の名義が変わる場合は、取引先等、各関係者には早めに伝えておきましょう。
クレジットカードの氏名変更
クレジットカードでの氏名変更の手続きは、カード会社によって変わってきますが、最初に氏名変更のための資料請求することが多いので、まずは氏名変更した際には、クレジットカード会社に連絡をいれましょう。
お手続き自体も1、2週間程度で終わる所が多いようです。
クレジット会社において、銀行の口座名義を改名した名前を求める会社もあるようです。
不動産登記の名前変更
手続きの場所
…不動産を管轄する法務局(法務局一覧)
手続きの期限
…特になし
手続きにかかる期間
…登記申請後1週間前後
手続きに必要なもの
…戸籍謄本(氏名変更後のもの)、住民票(本籍地記載)、認印
費用・料金
…不動産の筆数×1000円
改名した際には、所有している不動産の登記名義も変更することができますが、期限はないため、他の登記手続き(不動産売却の登記など)をするときに一緒にすれば問題ありません。
手続きは不動産を管轄する法務局にて、手続きを行います。法務局では相談員の人が常駐しており、予約をすれば親切に教えてくれます。
もちろん、不動産の氏名変更登記も弊所は対応しておりますので、必要な方は、是非ご相談下さい。
これはどうなる?!
改名後の戸籍謄本、住民票の記載
・戸籍謄本にはどのような記録が残るのか?
家庭裁判所から許可を得て改名をした場合、戸籍の記載はどのようになるのでしょうか?
実際に改名した後の戸籍謄本はこちらです。
改名をすると戸籍の身分事項に「名の変更」と記載され、右側に次のような記載がされます。
【名の変更日】令和〇〇年〇〇月〇〇日
【従前の記録】
【名】〇〇〇
離婚等ではなく、家庭裁判所の許可を得て苗字を変更する場合、次のような記載がされます。
・苗字変更後の戸籍
【氏変更日】令和〇〇年〇〇月〇〇日
【氏変更の事由】戸籍法107条1項の届出
【従前の記録】(空白)
【氏】〇〇
その他の戸籍の手続き(離婚、養子縁組、転籍など)をした場合、手続き後の戸籍がどうなるのかは「手続き後の戸籍の見本集」をご参考下さい。
・戸籍謄本に前の名前が載らないようにするためには?
改名をした後、従前の名前を載らないようにするためには、転籍届や分籍届をすることに新しい戸籍には次の内容のみ記載されることになります。
ただし、転籍届や分籍届をしても、転籍前の戸籍、分籍前の戸籍が抹消される訳ではないので、転籍前の戸籍、分籍前の戸籍には、従前の氏名が記載されております。
【名の変更日】令和〇〇年〇〇月〇〇日
家庭裁判所から許可を得て、役所へ改名届をすると住民票の氏名欄、筆頭者欄、備考欄に次のような記載がされます。
「氏名」
△△ △△○○ ○〇
「備考」
戸籍届出により令和○年○○月○○日氏名修正
※筆頭者、世帯主の場合は、同様に名前に抹消線が入り、新氏名が記載されます。
住民票に旧氏名を載らないようにするには、住所を別の市に移していくことで現在の住民票には記載されなくなります。住所を移しても、移転先が同じ管轄の役所の場合は、旧氏名は記載されます。
また、住所移転をしても、移転前の住民票が抹消される訳ではないので、移転前の住民票(住民票の除票)には、旧氏名が記載されております。
苗字、名前の読み方の変更
改名をした場合、読み方の変更届け出を提出する必要はあるのでしょうか?
改名をした場合でも、読み方について届け出ることは、不要です。
それは、氏、名の変更届を提出する際に、フリガナを記載して提出するため、その記載をもって役所は登録をしていきます。
ただ、最初に届け出をした読み方を変更したい場合については、「お名前の読み方を変更するには?」をご参照ください。
信用情報
過去には、苗字が改名された場合、金融機関が債務者を把握できなくなり、金融機関からの追跡を免れることもありました。
しかし、今は、名前、生年月日、旧住所、電話番号等の照合、旧氏名の債務情報を調べられる本人確認書類の確認等により、改名によって信用情報を欺くことは難しいと言えます。
クレジットカード等の審査の際に不正が判明すれば、社内ブラックとして、今後の審査が厳しくなることもあります。
改名した場合でも、審査の際には正直に旧氏名を報告しましょう。
もう一度改名する場合、許可はおりるの?
家庭裁判所から改名許可を得た人が、もう一度、改名をすることは可能なのでしょうか?
原則としては、名前を何度も変更することは、社会的に見て本人の同一性の認識を不明確にし、社会にも混乱を招くとして厳しくなる傾向にあります。
また、家庭裁判所で改名の手続きを進めていく際に、家庭裁判所からの照会書には次のような内容がよく記載されています。
過去の判例においては、再度の改名を認めたものもいくつもありますが、家庭裁判所から改名の許可があとに、もう一度改名の申し立てをする場合、要件は厳しくなるものと思ってください。
「2度目の改名申立を許可してもらう方法」もご参考下さい。
まとめ
上記の手続き以外にも、携帯電話の名前変更、生命保険の名義変更、自賠責の名義変更、facebookの名前変更等必要な手続きは、たくさんありますが、早くしないといけない手続きとそうでない手続きがありますので、急ぐ必要のない手続きは、落ち着かれてからされれば問題ありません。