・近くに同じ名前の人がいるため生活に支障を来している
・犯罪者と同姓同名であるため、名前を変えたい
・結婚して相手の親族と同姓同名になり改名したい
同姓同名、名前が類似する人がいる場合、それらを理由に名前を変更することはできるのでしょうか?
この記事では、「同姓同名の人がいることを理由として名前を改名するための方法」を記載しております。
※次の記事もご参考下さい。
「【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ」
「犯罪歴を理由に改名するには?」
目次
改名手続きについて
まず、名前を改名するには、次の手続きが必要となります。
①家庭裁判所にて名前の変更許可を得る
②市役所に変更の届出を行う
②市役所への変更届出は提出すれば問題なく変更されますが、①家庭裁判所の手続きは、申立をしても必ず名前の変更が認められるというわけではありません。
家庭裁判所での改名手続きの流れ(費用・書類・期間など)について詳細に知りたい方は、こちらの記事もご参考下さい。
【完全版】苗字・名前の改名手続きの流れ!変更許可のポイントは?
家庭裁判所での手続き
どこで手続きするの?
名前の変更申立を行う家庭裁判所は、住所地の家庭裁判所になります。
住所地の家庭裁判所を調べられる方は、「家庭裁判所管轄一覧」をご参考下さい。
手続きを行う人は?
家庭裁判所で名前の変更申立ができるのは、次の方です。
・名前を変更される方
申立人が15歳未満のときは,親権者等の法定代理人が手続きをします。
費用・料金は?
1.収入印紙800円
2.郵便切手200円~1500円ほど
※家庭裁判所での実費です。交通費、郵送費、戸籍謄本代などは除いております。
郵便切手の金額は裁判所によって異なります。
郵便切手の金額を調べられたい方は、「【全国版】改名手続きでの郵便切手金額一覧」をご参考下さい。使用しなかった切手は、手続き後返却されます。
必要な書類は?
名前の変更申立時に家庭裁判所へ必要となる書類は次の通りです。
①申立書
こちらは家庭裁判所にあげられている申立書の記載例です。
申立書の1P目については、記載例に沿って記載して頂ければ作成できますが、2P目の申立理由については慎重に作成する必要があります。
②戸籍謄本
戸籍謄本については、発行から3か月以内のものを求められます。
また、本籍地が遠方の方は、戸籍謄本を郵送で取得することも可能です。
「○○役所 戸籍 郵送」とインターネットで検索して頂ければ、請求方法が出てきます。
③名の変更理由を裏付ける資料
改名を必要とする証拠資料がある場合は、その資料を提出します。具体的には次のような資料があります。
通称名を使用されている場合
この場合の変更の理由を裏付ける資料としては、昔から今現在まで通称名を使用していたことが分かる書類のコピーを提出します。
・公共料金の明細
・年賀状
・手紙
・結婚式の招待状、席次表(座席表)
・注文書・納品書
・成績表
・卒業証書
・メール
・契約書
・名刺
・会社パンフレット
・新聞、地域紙(自分のことが掲載されているもの)
・健康保険証(会社が通称名で登録している場合)
友人・知人・会社関係・公共性の高いものを中心に、年代はまんべんなくご準備ください。
通称名については、「通称名とは?」をご参考下さい。
改名許可を得るためのポイント
名の変更をするにあたって条文には次のような記載があります。
正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
戸籍法第107条の2
つまり名の変更をするには、家庭裁判所から正当な事由があると判断されなければなりません。
そして同姓同名を理由に名前を変更されたい方は、次のような方が多いと思われます。
①近い関係で、同姓同名の人がいる
②犯罪者で、同姓同名の人がいる
それぞれ変更されるためのポイントを解説していきます。
①近い関係で同姓同名の人がいる
同姓同名の人が近い関係にいることを理由に改名するには次の点がポイントになります。
・近い関係(居住地区、職場等)で同姓同名の人がいる
・同姓同名が原因で生活に支障を来している
・近い関係(居住地区、職場等)で同姓同名の人がいる
原則、同姓同名を理由として改名をする場合、その同姓同名の人が近い関係にいる必要があります。具体的には次のような方です。
同姓同名の人が
・親族にいる
・自宅の近隣にいる
・職場にいる
同姓同名の人が親族にいる場合とは、婚姻や養子縁組などを理由に苗字が変わり相手側の親族と同姓同名になってしまった場合などです。
有名人の方や他の都道府県に同姓同名の人がいるなどでは、近い関係ということはできず、生活に支障を来す可能性が少ないため変更は厳しくなります。
・同姓同名が原因で生活に支障を来している
同姓同名の方がいたとしても生活に支障を来していない場合、変更の可能性は厳しくなります。支障を来しているとは、具体的に次のような場合です。
・親族で名前が同じであるため紛らわしい
・郵便物の誤配達などが発生している
・職場や取引先を混乱させてしまう
裁判所によっては、それらを証明する書類の提出などを求められる場合もございます。
②犯罪者で同姓同名の人がいる
犯罪者と同姓同名であることを理由とした改名の判例はほとんどなく、今回の説明は弊所で取り扱った数少ない事例を元にしたものですので、その点ご了承下さい。
改名が認められるポイントとしては、具体的に犯罪者と同姓同名であるため生活に支障を来していることを証明していく必要があります。
具体的には次のようなものです。
・知らない人から誹謗中傷を受けている
・就職の面接などで断られてしまう
・犯罪者と無関係なのに、Facebook等のSNSで誹謗中傷を受けている
また自分自身が犯罪者ではないことを証明することも好ましいです。
具体的には、犯罪者の情報が分かるもの(新聞やニュースなど)を提出し、顔、年齢、住まいなどが異なることを説明していきます。
さらに犯罪者と同姓同名を理由に改名する場合、通称名の実績を積まれておくことも好ましいです。
通称名の説明については「通称名とは?名前の変更に必要な改名実績や使用範囲などを解説」をご参考下さい。
変更後の名前について
なお、同姓同名を理由に変更する場合、変更後の名前が読みにくい名前だと認められにくくなる可能性があります。
変更の可能性を上げられたい場合、変更後のお名前は読みやすい名前にされることをお勧めします。
過去の判例
古い判例にはなりますが、同姓同名を理由とした過去の判例を掲載します。
近隣に同姓同名の人がいる事を理由とした判例は認められやすい傾向にあります。
なお、犯罪者と同姓同名を理由とした判例はございません。ご了承下さい。
許可の判例
近所に同姓同名の者がいて、間違い電話や郵便物の誤配等の支障があったところから家裁の許可により改名した者が、再び元の名への変更を申し立てた事案において、勤務先においては継続して元の名を通称として使用していたという事情を認定した上で、戸籍法107条の2にいう「正当な事由」を具備しているものと認め、申立てを却下した原審判を取り消し、変更を許可した。
平成7年6月12日/大阪高等裁判所/決定/平成6年(ラ)275号
同一世帯内に字画は異なるが名の呼称が同一の者がおり、日常生活において呼称上混乱を生じ多大の支障を生じている場合は、同姓同名の者があつて改名が許可されなければ社会生活上多大の支障をきたす場合に匹敵する事情があるとして名の変更を許可すべき「正当な事由」がある
昭和46年2月1日/広島高等裁判所岡山支部/決定/昭和46年(ラ)2号
近隣に呼称が同一で、字画も大部分類似した者が居住して、社会生活上支障をきたしている場合には、近隣に同姓同名の者がいる場合と同様、名の変更を許可すべき正当の事由がある。
昭和40年9月21日/大阪高等裁判所/決定/昭和40年(ラ)73号
近隣に同姓同名の人妻が居住し、かつその年輩もほぼ同じなので郵便物その他通知書等が誤つて配達されることが往々あるし、その他日常の生活にいい知れぬ支障を感じており、そのためその名「冨美子」を「十美代」と変更することは、いわゆる名の変更について正当の事由ある場合に該当する。
昭和31年12月24日/大阪高等裁判所/第3民事部/決定/昭和31年(ラ)273号
同町内に同姓同名の居住者があり、改名を求める名「秀和」はさほど難読であるとは思われないから、もし右のような同姓同名のものがあるため、郵便物の誤配があつたり、税金関係、選挙の投票等の面で両者混同され、社会生活上著しい不便、不自由があるのであれば、改名を許可すべき正当の事由が存するものというべきである。
昭和31年11月29日/大阪高等裁判所/第1民事部/決定/昭和31年(ラ)241号
同町内に同姓同名の者が居住していることを理由とする名の変更の申立があつた場合に、申立人の改名を求める名が難読であることに重点をおいて却下するのは違法である。
不許可の判例
いわゆる同姓同名が名の変更の正当事由といいうるためには、近くにこれに該当する者がいてひんぱんな郵便の誤配等社会生活上著しい支障のある場合に限られるのであつて、単に同一家庭内に呼び名を同じくする者がいて不便であるとか、あるいは不自然に感ぜられるというような程度では右正当事由に該当するということはできない。
昭和40年1月28日/大阪高等裁判所/決定/昭和39年(ラ)291号
部落内に同姓同名の者や類似した名の者がいて、「清」という名の改名はできるのであるが、改名しようと申し出た名が、「起由」、「季芳」、「貴由」等の読みにくい名であるときは、改名を許すことはできない。
昭和32年2月21日/東京高等裁判所/第8民事部/決定/昭和32年(ラ)1号
却下された場合
万が一申し立てが却下されてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
方法としては次の方法があります。
・却下の判決をうけてから2週間以内に即時抗告の申立てをする方法
・通称名の実績を積み上げて再度申し立てる方法
詳細な内容については、こちらの記事をご覧ください。
改名を取下げるべき?却下された場合は?
改名許可後の手続き
無事に改名することができた後はどういった手続きをする必要があるのでしょうか?
一般的には次のような手続きをする必要があります。
1.戸籍謄本、住民票の変更
※住所が日本にない方は、改名許可後の戸籍の変更届を本籍地の役所へ提出することになります。
2.マイナンバーの変更
3.健康保険、年金の変更
4.パスポートの変更
5.印鑑登録の変更
6.運転免許証の変更
7.銀行等の口座名義の変更
8.クレジットカード等の名義変更
9.不動産登記の変更
10.生命保険、医療保険等の変更
11.車検証、自賠責保険等の変更
改名許可後の手続きについては、こちらで詳細に記載しておりますので、ご参考下さい。
改名許可後の手続きについて
まとめ
犯罪者や近隣の人、親族と同姓同名であることを理由とする名前の変更手続きを解説させて頂きました。
特に近隣に同姓同名の人がいることを理由とした改名は認められやすい傾向にあります。
改名手続きをご依頼されたい方は、司法書士事務所エベレストまでご相談下さい。